緊急事態*後編
「二人とも、静かにしろ。……それにしても、頭に花とはハリエットとキャラがかぶるではないか」
「……」
ウィルの発言にまたまた沈黙。
セネルはまだ顔を隠し、泣いている。
「クーリッジ、大丈夫だ。ハリエットは、頭に花をつけているんだ。花が咲いているクーリッジとは、キャラかぶりをしていないぞ」
「クー、それちょっと違うよ(つっこみ所が)」
「そうなのか?」
とりあえず、皆で花を観察する。
「どうやったら、この花とれるんでしょう?」
ようやく復活したシャーリィが心配そうに言った。
その後で皆を見回す。
「引っ張って抜いちゃいますか?」
「それは、やめた方がいいですよ」
「何でじゃ」
「ハリエットとおそろいキャラでいくためか!?」
ウィルのおかげで話がまったく進まない。
「ちょっと静かにしましょうねぇ……」
お腹に一発。
グリューネ、愛の必殺技。
「……何かさ、今、グー姉さんが最強に見えたよ」
ノーマの呟きに、全員が「うんうん」と頷いた。
「そうかしらねぇ……?」
「それで、ジェイ。何故だめなんだ?」
クロエが話を修正する。
「何かの本で読んだんですけどね。体に生えた花を抜くと、死ぬらしいですよ」
「!!!」
「お兄ちゃん。わたし、一生その花育ててあげるから心配しないでね」
「一生花咲かせたままなんて、嫌だ」
「ちなみに、ずっと花を咲かせておくのも危険ですよ」
「何で〜?」
ノーマが聞くと、ジェイはあやしげに笑った。
「生気を全て吸われて、死んでしまうそうですから」
「!!!」
「何ちゅーか……セの字はかな〜りヤバい状況なんじゃな?」
どうすればいいのか分からず、皆顔を見合わせる。
「そうか」
閃いたと言わんばかりに、セネルが手を叩いた。
「どったの?」
「えいっ」
セネルは自分の頭に咲いた花を引っこ抜いた。
「!!!」
「最初からこうすればよかったんだ」
「ちょっ、ジェイ。クーリッジは大丈夫なのか!?」
「お兄ちゃん!!」
「あ〜言い忘れていましたけど、自分で抜く分には問題ないそうです」
「そうなのぉ? 良かったわねぇ」
のほほんとするグリューネの後ろにいる彼女たちはかなり怒っている。
いつもとは違う重すぎる空気が目に見えた。
「皆さん、落ち着いてください」
「私は十分落ち着いている」
「ジェージェー、ただですむとは思わないでよね」
「覚悟してください☆」
セネル宅を飛び出すジェイの後を追う三人娘。
未だに倒れているウィルの顔に油性ペンで落書きをするグリューネ。
いつもと違う役割に落ち着かないモーゼスは、ギートと共に「青春じゃ〜!!」と言って走って行った。
セネルは遅すぎる朝食(もう昼食)をとるために、パンを焼き始めた。
後に分かった話だが、セネルの頭に咲いた花。
それは、どこかの大陸では少々有名な「ティートレーイ」という名の花だったらしい。
何故頭に咲いたのかは、謎のままだが……。
E N D
2005/10/26
移動 2011/02/01
(約5年前の作品……)