君のキスに
※「君にキスを」葉佩視点



 心臓に触れるキスに、情けない程心は騒いで。



 微かな音を立て、左胸に唇を寄せられる。
 柔らかな感触が触れる度に、鼓動が激しさを増すのを感じた。



 血と、肉と、熱を知って欲しくて。



「皆…守…ッ」

 上がる吐息に、否応なく感情は高まって。
 何度も、何度もキスを繰り返す。



 此の生命(いのち)を、忘れさせない為に。



「―――九龍」

 キスの合間に、名前を呼ばれる。視線の先には、今にも泣き出しそうな、儚い微笑み。

「死ぬなよ?」



 共に在れない事は、知っているから。



 閉じられた目蓋が、痛みを堪える様に見えて。
 罪の意識など、感じなくて良いから。



 いつか、離れるなら。



 皆守の台詞に、九龍は苦笑を漏らすと其の頭を抱きしめた。
 密着する肌が、互いの熱を伝える。

「何言ってんだよ。天下の《宝探し屋》に向かってさ」
「そう…だな」

 皆守は更に堅く目蓋を閉じ、九龍を抱きしめ返した。



 君に、殺されたいと希う。








   終


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