君にキスを
※特殊な書き方してます



 君の心臓に、キスを贈ろう。



 微かな音を立て、左胸に唇を寄せる。
 柔らかく触れる度に、伝わる鼓動は激しさを増した。



 血と、肉と、熱を知る為に。



「皆…守…ッ」

 上がる吐息に、否応なく感情は高まって。
 何度も、何度もキスを繰り返す。



 其の生命(いのち)を、覚えておく為に。



「―――九龍」

 キスの雨を降らせながら、口にするのは、たったひとつの希いだけ。

「死ぬなよ?」



 血塗られた此の両手が



 閉じた目蓋に浮かぶのは、亡くした筈の儚い面影。
 拭い切れない、罪の意識。



 いつか、君を



 痛みを堪えるような皆守の声音に、九龍は苦笑を漏らすと其の頭を抱きしめた。
 密着する肌が、互いの熱を伝える。

「何言ってんだよ。天下の《宝探し屋》に向かってさ」
「そう…だな」

 皆守は更に堅く目蓋を閉じ、九龍を抱きしめ返した。



 殺してしまう、其の日迄。








   終


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