夢路にて
陽→陰ルート
夢路にて。
いつも出逢うは彼の姿。
知らない――だが、良く知っている筈の彼。
その背も、その声も、その体温も。
総てが愛しく、哀しくもあった。
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「…って、何でだよ…」
男の夢を見て『愛しい』と思うなんて。 これでは自分が衆道のようではないか。 龍斗はひとつ息を吐くと、夜風に当たろうと布団を抜け出した。 障子を開けた途端、涼しい風が頬を撫でる。 龍斗は縁側に座り込むと、風に身を任せる事にした。 目を閉じると、意識は内へと向かう。結局は、思考は赤茶の髪の主へと戻っていた。 ふと、誰かに似ていると気付く。
「蓬…莱、寺…?」
ついこの間、王子稲荷で逢った剣士を思い出す。 九桐とは知り合いだったようだが、龍斗には今迄逢った記憶は無い。 しかし、この違和感は――。 大切な『何か』を忘れている感覚に、気持ち悪さを覚える。 気の所為か、額の傷跡がある筈のない痛みを訴えていた。
「ま、良いや。寝よ」
明日も早いしな、と無理矢理に意識を戻し、再び布団に潜り込む。 中々訪れない睡魔に苛立ちながらも、何時しか龍斗からは規則正しい寝息が上がっていた。
――夢で逢う貴方を、何時しか思い出す事を祈りながら。
終
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裏Verも存在。
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