可愛さは罪になるのだと知った日
※オズギル風味(味?)
※ドラマCD特別編『Detective―名探偵アリス!?―』ネタです。
当然、女装。(……)
大丈夫な方のみスクロールして下さい。
少しだけ、調子に乗っていたのは自覚している。
アリスを危険な目に遭わせる訳にはいかないと思っていたのは事実。それに、万が一違法契約者が罠に掛かったとしても、ギルバートならば上手い事立ち回れるだろうと考えていた。
一応はある程度の根拠に基いての発案だったが、それがこうも自分の首を絞める結果になるとは、その時のオズは一切予想していなかったのだった。
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聞き込みを始めてから、5件目の店でも見る事になってしまった光景に、オズは知らず溜め息を吐いた。視線の先では、落ち着いた色のドレスを身に纏った長身の美女が、好色を隠そうともしないニヤついた男に言い寄られている。
「……予想以上の美女だとは思ったけどさ」
これは幾らなんでも絡まれ過ぎだろう。
誰ともなしに呟くと、オズは壁際に追い込まれそうになっている美女の元に歩を進めた。近付く気配に気付いたのか、困惑に満ちた金色の目がオズを捕らえる。余程ここから逃げ出したいのか、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
それを目にした途端、困り果てた顔に少しばかりの嗜虐心が刺激されそうになる。だが、主たる者としては助けを求める従者を放っておく訳にはいかない。
「お兄さん、悪いけどそこまでにしてくれない?」
好色男の肩を叩き、注意を此方へ向ける。予想していなかったであろう闖入者を認識した刹那、男の顔は不快そうに歪んだ。
「んだぁ?ガキが口出すんじゃねぇよ」
「嫌がる相手を口説こうとするのは、スマートじゃないですよぉ?」
眼光鋭く、邪魔者を追い払おうとする男の威嚇を軽く受け流し、オズは可愛らしいしなを作りながら笑顔で切り返した。馬鹿にされた事を瞬時に悟ったのか、男の顔が怒りに染まる。
「関係ねぇヤツは引っ込んでろ!それとも何か?お前、この姉さんの弟か何かか?」
肩に置かれた手を勢い良く払い除け、男は罵声と共にオズの胸倉を掴もうと手を伸ばした。オズはそれを避けながら、隠し持っていた銃を取り出そうとしたギルバートを視線で抑える。
「関係、ね。まぁ、弟ではないけどさ」
「だったら―――」
「でも、黙ってる訳にはいかないんだよね。それは、オレのものなんだから」
オズは据えた目で男を見遣ると、所有権は此方に在ることを明確に告げた。ついでに、他では聞かせられないような言葉の数々を浴びせる。
相手が再起不能なまでに枯れ果てたのを見届けると、オズはギルバートの手を取り店の出入り口に足を向けた。
初めて履いたヒールに慣れないのか、若干ふらつきながら歩くギルバートに速度を合わせゆっくりと歩く。その際、向けた視線に違和感を感じたのかギルバートは怪訝な顔をした。
「オズ?何かあるのか?」
「別に、これと言ったものは無いけど。ただ、ギルが女の子じゃなくて良かったなぁって」
「……嫌味か、それは……」
返された台詞に、ギルバートはがっくりと肩を落とした。オズに嫌味のつもりは毛頭無かったが、言葉の真意に気付かないなら、それはそれで良い。
従者の魅力は主だけが知れば良いのだと判断を下し、聞き込みを続けるべく次の店へと向かった。
終
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