「なにしてるの君」


いつもと変わらない朝。いつもと変わらない昇降口。いつもと変わらない下駄箱にある手紙。宛名も宛先も書かれていない。
も、もしやこれは!淡い期待を抱きながら開けてみる。それは要約すると屋上へ来い的な感じだ。
いらっしゃいあたしのブルースプリング。中学校三年間で初めてのときめき。
心弾ませながら屋上へと続く階段を登る。自然にステップを刻む足。途中階段を踏み外しデットオアライブを決めこむ。スキップをしながら階段を登るのは大変危険だと身をもって知る。いかん浮かれ過ぎた。

錆びたドアを開けた。そこには清々しい青空が広がる。あたしの心中も今の空と一緒だ。きっともう少しすればこれが桃色に染まるだろう。
空を眺めて待っていたら、ドアの開く無機質な音がした。つ、ついに!期待を胸に振り向く。
一瞬にして心臓が止まった。

清々しい青空が一気に灰色と化した。あたしの心中も今の空と一緒だ。きっともう少しすればここが赤色に染まるだろう。

「無視かい?いい度胸してる」

なぜ。
なぜここに風紀委員長が降臨する。
こんなに身近で見るのは初めてだ。やばい泣きそう。現に震えが止まらない。
さっきから中に仕込んでいるものがちらつき更に怖さ倍増。無理無理泣く今すぐ泣ける。

「聞こえないの」
「ごめんなさいいや本当すみませんでした」
「なにさり気なく帰ろうとしてるの。話はまだ終わってないよ」

雲雀さんの手があたしの腕を掴みなさった。死ぬ。気で死ねる。
相変わらずの無表情で非常に怖い。居心地が悪い空気を変えるため今までにない程気を使って笑顔を作った。
なに笑ってるのキモいよ。
玉砕。

「君、ここが立入禁止なの知らないの。知らないとは言わせないけど」
「いや、あの、呼ばれて」
「誰に」
「……………友達に」
「僕に嘘をつくなんて本当いい度胸してる」
「え!(なぜバレた)」
「友達に呼ばれたくらいでスキップ、ましてや階段踏み外すなんてないでしょ」
「え、ええ!?」

無表情な雲雀さんの口元が吊り上がった。
掴まれたままの腕が引っ張らる。
近い近い近い近い!

「その手紙、僕が書いた」
「…え、」
「君さっきからそればっかだね」
「は、話がよくわからな…」


「ねえ、なまえ」





苺畑で靴紐を結ぶ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -