待て待て待て。昨日はなにをしていた。どこに行ってなにをしていた!いかん全く思い出せない。第一、ここはどこだ。でかでかと糖分なんて文字を額縁に飾るという奇抜な発想をする友人は今のところいない。
そして時折くる激しい頭痛はなんだ。

「おうおう、目は覚めたかいお嬢さん」

死んだ魚の目よりさらに死んでいる目をした男が、コンビニ袋を片手に当たり前のように入ってきた。
そうか、ここはこの人の。
しかし知らない人には変わりない。

「すみません、どちらさまですか」
「え、覚えてねえの」

悲しいねぇ、と先程買ったと思われるいちご牛乳をがぶ飲みし始めた。
この人には悪いが全く覚えていない。この人に限らず昨日のことは記憶から抹消されている。
そしてこの頭痛。
も、もしや!

「あなた、鈍器であたしの頭を殴って昨日の記憶を…!」
「いや俺そんな器用じゃないから、自分不器用ッスから。あんたあれ、二日酔いだよ二日酔い。いちご牛乳飲む?」
「い、いりません!あいたっ」
「声張り上げないほうがいいぞー。頭に響くから」

さっきよりも頭が痛む。嘔吐感、のどの渇き、その他もろもろ。どうやらこの人の言う通り二日酔いのようだ。
おかしいなあ、酒なんて滅多に飲まないのに。

「酒を交わしあった仲なのによぉ。忘れられるとは心外だぜ、なまえちゃん?ちなみに俺銀さんね」

いちご牛乳を飲み終えたと思うと、もう一本袋から取り出し飲み始める。飲み過ぎだ。
そしてさっきより若干目が生き返ったように見える。いちご牛乳で回復するとは、なんという愉快な構造をした身体なんだ。

「銀さん!昨日の出来事を包み隠さず教えてください」
「ああ、男と別れたとかでやけ酒してるなまえがあまりにも不憫だったからな。俺が愚痴聞いてやったのよ。お隣さんだったし」
「………」
「もうね、飲むわ飲むわ。べろんべろんになったおまえさんを置いてくわけにもいかねえんでね、うちに連れてきた」

あまりの恥ずかしさに死にたくなった。

「包み隠さず言えというから言うけどさ」
「な、なんですか」
「銀さんとなまえ、昨日から熱々カポーだから」
「…は」
「あ、もういくとこまでいってるから。前言撤回とかなしだから」
「ちょ、待っ」
「忘れたと言うなら思い出させるまでだけど」




(肝臓は大切に)

沈黙の臓器
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