「はい没収」

油断した。銀八だからと油断した。あたしの愛しい携帯君は洗濯しているのか不明なあの白衣のポケットに。きっと洗濯していない。

「返してほしかったら先生のお嫁さんになりなさい」
「天女の羽衣か」
「放課後まで預かってるからなー」

放課後取りに来い、と言われ渋々職員室まで取りに行ったわけだが肝心の銀八がいない。聞けば既に帰ったという。自分から取りに来いと言ったくせに、ふざけんな!あまりにムカついたので銀八の机にあるお菓子を根こそぎ拝借し職員室を後にした。
今日一番吃驚したのは授業中あの銀八携帯を取り上げられたこと。これ以上の屈辱はない。職員室に行けば既に銀八が帰っていたこと。これ以上腹立つことはたぶんない。そして帰ったはずの銀八が今目の前にいること。

「おせえよなまえちゃーん」
「なんでここにいるんですか。職員室に行ったらいないし、取りに来いって言ったのは先生でしょ」
「職員室に取りに来いなんて一言も言ってねえけど」
「!」

無性に今こいつの乗っている原チャリのタイヤをパンクさせたい。地味だけど地味に困る。そして殴りたい。

「返して欲しかったら後ろに乗りなさい」
「なんで」
「送ってやろうという先生の親切心」

明らかにあやしい。けど携帯は返してほしい。あやしいが先生の親切心とやらを信じてみる。

「おまえん家に送るなんて一言も言ってねえけど」

結局そのまま銀八と放課後デートと言い難いデートをしたのだった。携帯のためによくがんばったと思う。自分を褒めたい。そして金輪際銀八は信用しないことにする。



放課後デート
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