確かに言っていたかもしれない。
聞いていたような気もするし聞いていなかったような気もする。記憶が曖昧だ決して脳みそが馬鹿になったわけではない。仕方がないだろう寝ていたのだから。
その証拠に隣の席の奴が親切に教えてくれた。今朝メールで。嘘だ前言撤回全く親切なんかじゃない。本当の心優しき人は昨晩に教えてくれるはずなんだ奴は焦るあたしを見たいそうあいつは筋金入りの超ドSなんだ!おかげで朝から全力疾走愛情一本欲しいところ。

「あり?間に合ったのかよ」
「あなたが親切に遅刻点検があるって教えてくれたからね!ちょっとそこ舌打ちしない」

間に合ったと言ってもギリギリだ。あと一、二分もすれば予鈴が鳴る。
校門には風紀委員がずらっと立っている。風紀委員の遅刻点検なんてたまにしかないくせに厳しい。これでもかって言うくらい罰が厳しい。そのくせお妙さんには優しい。遅刻をしても笑顔一つで撤回になってしまう彼女が恐ろしい。委員長による惚れた弱味でもあるのだけれど。タチの悪い公私混同だ。

「ああもう予鈴鳴っちゃう、教室行かなきゃ通して沖田」
「ちょっと聞いてくだせェ」
「あとで聞くから」
「なまえが好き」
「え」

すぎん、と心臓に何かが刺さった。気がした。同時にあたしの動きも止まった。なにをいきなり、こんなときに。

「て言ったらどうする」
「んな…!」

貴様!やはりおまえはSだよあたしのときめきを返せ!
時間は無駄に過ぎついに予鈴が鳴ってしまった。沖田のせいで教室に行けなかった。まあいいか担任の銀八はまだ来ないきっと来ないあたし先生を信じてる。
乙女の純情をもて遊んだ沖田を一発、いや二発ほど殴ってから行きたかったがとりあえず先を急ぐことにする。

「なまえは遅刻…と」
「待てい!なんで遅刻なのよあたし予鈴鳴る前に来てたでしょ」
「けど門くぐってねぇだろ」
「!!」
「たった一歩で学校に入れたのにな?なまえは馬鹿でさァ」
「は、謀ったわね!」
「さあ?さーてどんなペナルティを下そうか」

ああついてない本当についてない。このドSのことだから過酷な罰が待っているんだ一ヶ月トイレ掃除とか。ベタだ。

「とりあえず今日から総悟と呼んでくれィ」





遅刻
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