我が侭当主のお世話をし、使用人と言う名の役立たず共のお守りをする。毎日のことだが殺したい程身心共に疲れる。だから今日も癒しを求めて彼女に会いに行く。裏庭で待つ、ニャーン、とかわいらしく鳴く貴女に。
最近、彼女はお友達を連れてくるようになった。

「こんにちは執事さん」
「こんにちはなまえさん」

最初は驚いた。敷地に他所の人間がいるのだから。普通に不法侵入である。出ていくように促したら彼女が怒り出したのだ。あの温厚でかわいらしい彼女が…正直ショックだった。それ以来、彼女が現れる際は少女も一緒になってしまった。
なまえ、と名乗った少女は彼女の喉元を撫でるとゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らす。よくなついてるようで、少女の足に頬擦りする。ああ、うらやましい。私にもしてほしい。そんな私の心境を察したのか、少女はクスクスと笑っていた。

「この子照れてるんだよ。執事さんかっこいいから」
「これはこれは、恐縮に存じます」

餌を与えると、黙々と食べ始めた。毛並のいい黒髪を撫でる。温かくて彼女の命を感じた。

「ところでなまえさん」
「はい」
「いつも思ってますが、貴女はどうやって入って来てるのですか」
「びゅーんと」

意味わからん

「どちらからいらしたのですか」
「あっち」
「…どこら辺にお住みなのですか」
「そこらへん」
「はァ…。何も教えてくださらないのですね」

何を聞いてもうまく誤魔化される。名前と彼女の友達としか教えられていない。変わり者だが、だからといってあちらの世界の者であるわけでもなく。普通の人間であることに変わりはない。とにかく謎である。

「執事さんのこと教えてくれたら教える」
「私は…只の執事ですよ」
「じゃあわたしも只のこの子の友達です」
「参りましたね」
「えへへ」

食事を終えた彼女は少女の膝の上で丸くなった。昼寝だろうか。眠る彼女もかわいらしい。少女の前では無防備になる。絶対的な信頼があるのだろうか、全くもってうらやましい。私の膝にも来てください。

「執事さんって猫好きなんだね」
「ええ、とても」
「いいなあ。わたしも猫になりたい」
「ほう…」
「…は!あの、特に深い意味は…!」
「猫になるには」
「え」
「手が柔らかくなることですね」
「…!!」
「なまえさんは合格です」

私好みですと耳元で囁けば、さ、さよなら!と彼女を抱えて帰ってしまった。顔を真っ赤にして。ああ、最高の癒しである彼女の手をプニプニできなかった。

少女の名前と彼女の友達としか知らされていないが、一つわかっていることがある。それは私を好いているということ。猫も好きですが、なまえさんのこと、結構気に入ってますよ。私には珍しく。

「また明日お待ちしていますよ」





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