「ちょこれいと?」
「そうチョコレート」

特別に!剣心だけに!特に意味はないけどね!一応補足しておいた。正直心臓が破裂しそうだ。いつ破裂してもおかしくない。顔もきっと真っ赤でゆでダコだろう。

「かたじけないでござる」

見慣れている筈なのに今日の剣心の笑顔は何百倍にも輝いて見えた。いかん焼け死ぬ。

「してちょこれいととは?」
「…は」
「拙者どうも異国の物には疎いもので」

ちょこれいととはどんなものでござるか?とニコニコと聞いてくるものだから堪らず剣心の足を力を込めて踏んでしまった。痛いでござる!と剣心は泣く。ちょっとでも期待した自分がバカだった。剣心がチョコレート、ましてやバレンタインなんてもの知っているわけない。
だから剣心は只純粋にチョコレートを知らなかっただけで。足を踏んでしまったことに罪悪感を感じ、ごめんと一言謝った。

「チョコレートは洋菓子よ。甘くておいしいから」
「洋菓子でござるか。では皆でいただくと」
「だめ!」
「おろっ」

大声を出したせいか、剣心は驚いたと同時になぜ?と頭に疑問符を浮かばせている。かわいい。が許さん。チョコレートもバレンタインも知らなくていいがそれだけは許さん。

「さっきも言ったでしょ。剣心だけに、特別に、あげたの」
「?だから皆で」
「剣心だけ、食べて」

これでももし皆で食べると言われたら、申し訳ないが返してもらう。剣心は優しいから自分は食べないで皆にあげてしまう、ような気がする。それでは意味がない。佐之助や弥彦に食べられるくらいなら自分で食べたほうがずっとマシだ。

「わかったでござるよ」
「!ありがとう剣心」
「それに、きっとなにか意味があるのでござろう」
「!?」
「皆には内緒でござる」

ニコッと笑って剣心は去って行った。笑顔は見慣れている筈なのに、激しい動機は止まらない。これは笑顔だけじゃない、最後のあの言葉。もしかして、知っていたのか。いや、剣心に限ってそれはない。はず。
とりあえず今はチョコレートを渡せたことと、剣心に食べてもらえることにニヤつきが止まらない。





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