明日は密かに思いを寄せているあの人の誕生日なので、思い切って聞いてみた。

「沖田さんの今欲しい物は」
「副長の座」

終わったな、と思った。何がってなまえの恋心的なものがだ。予想はしていた。が、しがない女中の下っ端が副長の座なんて用意できるわけがない。できたら逆に困る。副長に

「も、もう少し穏便に」
「じゃあ土方さんの首」

全然穏やかじゃねーよ!
正直どん引きである。

「あの…」
「冗談でさァ。いや本気ですがね」
「どっち」
「俺の欲しいものは晴天でさァ」
「へ」

結局どっちなのかは最後まで言わずに聞きたかったことをいきなりぶっちゃけられ、なまえは返答に困った。それは突然だったことと平凡というか、予想外というか、むしろ変な答えだったからだ。晴天て。

「今日の天気が晴れて、織姫と彦星が会えればいい」
「え…ロマンチック」

7月7日の今日は七夕である。しかしあの他人の不幸は蜜の味な沖田が、織姫と彦星の逢い引きを応援するとは正直気持ち悪い。ロマンチック過ぎる。
なまえは今日の天気予報を思い出した。確か曇りのはずだ。

「…晴れればいいですね」
「あァ。そしたら俺の願いも叶うだろうね」

叶えばいいなあとぼやきながら、そそくさとその場からいなくなった。

七夕、願い事と言えば、最近近藤局長が大きな笹を持ってきて短冊を書こう!と張り切っていたのを思い出した。子供じゃないんだから…と思いつつ書いてしまう乙女心。だからと言って思いが通じますように…とも書けない乙女心。無難なことを書いて吊るしたことを覚えている。なまえは飾られている笹を見つけると沖田の短冊を探した。すぐに見つけれた。デカデカと副長の座と書いてある。結局これか!これなのか!つまり降り出しに戻ったことになる。絶望した。
なまえは気付かなかった。デカデカと書かれてる横に小さく書かれた字を。

「あいつバカだから気付かねえだろーねィ」

副長の座
はいつでも奪えるからとりあえずなまえを





洒涙雨
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