今日はあの鬼の副長と呼ばれるアレの誕生日である。子供の日が誕生日なんて…ブフゥー!似合わないにも程がある。全国のわんぱくキッズに謝れ

「おまえが全国の五月五日生まれに謝れ」
「心を読まないでください。プライバシーの侵害ですよ」
「全部声に出てたわァ!」

まあお約束な展開である。とりあえずうるさいアレは無視するとして、祝う気持ちはこれっぽっちもないが社交辞令として作った豪華料理を目の前に置いた。意外にも目を丸くして見ている。

「おまえが全部作ったのか?」
「そうですよ!料理は得意中の得意ですから」
「馬鹿にも才能はあるのか…」
「おろし金でその頭すりおろしますよ」

無駄口たたずにさっさと食えや!オーラを出したらやっと箸を持ち、料理を掴み、口の中へ…と行かずに懐から黄色いアレを出し料理の上へと…て待て待て待てェェェ!

「ちょっと土方さんんん!?なにしてんですか!」
「男は黙ってマヨネーズ」
「うるせー!いくら上司でもそんな暴挙許しません」
「てめっ返せ」
「なにお母さんにおもちゃ取り上げられた子供のような顔してるんですか!そんな顔しても返しませんよ」

普段の行いには目を瞑る。が、今日はそんなわけには行かない。腕によりをかけて作ったご馳走を、そう簡単に犬のエサにしてたまるものか!戸を開け、手にあるマヨネーズを思いっっきり庭に投げ捨てた。後ろで土方さんが怒っているのがわかる。でもあたしも怒ってるんだ

「テメー…やっていいことと悪いことがあるぞ」
「その言葉鏡に向かって百万回言ってください」

チッ、と軽く舌打ちすると煙草を取り出し火を付けふかしはじめた。これは苛々してる
マヨネーズかけないで、食べてください。一口でいいので。あとはマヨネーズでもなんでもかけてください。投げてすみませんでした。後で弁償します。
言うだけ言って、失礼しました、と部屋を去ろうとした。背後でパキッと割り箸を割る音が響いた。

「うめえよ、なまえの飯」
「土方さん」
「だからここにいろ」

なんだかんだ言って結局全部平らげてしまった。マヨもなにもかけずに。これは、素直に嬉しい。
お粗末さまでした。

「土方さん」
「なんだ」
「お誕生日おめでとうございます」
「……」
「?土方さ…、ぎゃあ」
「おまえは一々可愛いんだよ。その声はいただけねえがな」
「意味わかりません!ちょ、離して」
「今日は俺の誕生日だろ?悪いが好きにさせてもらう」

怒ったり悲しんだり喜んだり笑ったり、忙しいやつ そこが可愛いんだけどな、と聞こえるか聞こえない位の声で耳元に囁かれた。くすぐったくて身震いがした。

「もしかして、填められた?」
「さあな」




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