なまえが浮気してるかもしれない、とえらく真面目な顔で言うので思わず鼻で笑った。

「あんた馬鹿ですか。こんなダメ人間を一途に思ってくれる人なんてなまえさんしかいませんよ」
「おまえ社長に向かってなんつー言い方してんの減給すんぞ」

うるせー社長てのは給料払ってから言ってください、て言ったら簡単に黙った。
だいたい、あんないい人が浮気するはずないだろ。あんたに愛想つかしたなら別だけど、て言ったら倒れた。返事がない、只の屍のようだ
ここ最近なまえさんは変に洒落こんでそわそわして挙動不振に姉上と出かけてる、と行ったらしい。確かに姉上は出かけてる。そういえば姉上も少し雰囲気が違ったような…

「……」
「……銀さん」

万事屋を出て、昼間の歌舞伎町へと向かった。ここでいつもとなにか違うと気付けばよかった。なにかひとつ足りないことを。そしたら、今目の前にある事実を見なくてもよかったんだ

「おーい浮気ですかこれはァァァ」
「なんで銀さんがここにいるの!」
「万事屋の情報網甘く見んなよコノヤロー」
「姉上達なにしてるんですか!ていうか神楽ちゃんもいたの」
「なにかしらこのKY」
「てめっ、銀ちゃんと話してるとき気付けヨ」

あの時なぜ神楽ちゃんがいないことに気付かなかったんだろう。気付いていたら三人で出かけてると推測できる。後で神楽ちゃんに聞いてもいいこの子タラちゃん並みに嘘下手だから
しかしこれは予想外だった。きらびやかな店で、執事と言われる店員を下僕当然に扱う姉上を、いろんな意味で見たくなかった。

「帰るぞなまえ」
「えー!もうちょっと」
「なまえが俺の知らないとこで知らない男に優しくされてるなんて想像しただけで腹立つ、うわ今ものっそい腹立つ。この店壊していい?」
「ちょ、銀さんだめだめストップ!帰りますよみなさん!」

銀さんが軽く過激派攘夷志士になりかけたので、面倒なことが起こる前に執事カフェを後にした

「おまえもう行くなよ」
「えー…ちょっとした癒しの地だったのに」
「どうしても行きたいときは俺が奉仕してやらぁ」
「……」
「もし俺がメイド喫茶行ってたら嫌だろ」
「うん…」
「そしたら私がご奉仕して差し上げますよ。お還りなさいませご主人様」「いやそれどっちかというと冥土喫茶だから。そんなホラーな喫茶店誰も行きたくないから」
「お帰りなさいませご主人様!」
「あ…ちょっと予想以上に可愛かった。続きは夜な」
「きも!銀さんあっち行ってくれない」

悪態つく割には顔を赤くしていたなまえさん。ああこの二人はどっちに転んでもバカップルなんだなと、後ろから二人を姉上と見ていた。見ていてきっとこの二人は間違っても浮気なんて起きないんだろう、と少し心が暖かくなった。恋をするならこの二人を見本にしよう。

「チッ目障りなバカップルネ!死んでくんないかな〜ていうかわたし全然出番なかったアル!存在感薄すぎネ新八じゃないんだからつーか死ねよ新八」

本当台無しだよ


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