山から村へ続く道で山賊に襲われていたら、長い刀を持ったラフな格好のお兄さんと白クマに助けられた。山でクマに遭遇することはあるが、白クマって。ましてや助けられるなんてきっと一生ない体験である。
「お姉さん大丈夫?立てる?」
「!?クマが喋った…!」
「クマが喋れてすいません…」
「えええええ激しく落ち込んだ!」
なんて打たれ弱いクマ。そんなわたし達をよそにお兄さんはそっぽ向いてなんだか無愛想。怖いがお礼は言わないと。
「あの…ありがとうございました」
「通り道だっただけだ」
顔も見ず、行くぞベポとスタスタと歩き始めたお兄さん。白クマもその後を着いて行く。
「クマさんもありがとねー」
「気をつけてねお姉さーん」
人間よりクマの方が優しかった。
さて、こんなところで座っているわけにも行かないのでわたしも村へ戻ろう。そう立ち上がろうとするも全く足に力が入らず立てない。これは…どうやら腰が抜けたようだ。ああ情けない。ここは道のど真ん中だ。誰か通るのを待ってみようか。けどあの山賊達がまた来たら…。恐怖と一人ぼっち故の心細さに泣きそうになる。既に涙目である。
「おい」
「え…あ」
先程のお兄さんがわたしを見下ろしている。
「何故立たない。また襲われたいのか」
「それが…腰が抜けて」
「……」
お兄さんの呆れてる空気がひしひしと伝わってくる。いや本当すみませんでした。するとぐいっと腕を引っ張られて、気づくとお兄さんの背中に乗っていた。これは俗に言うおんぶ?えええええ
「あ、あの!」
「立てないんだろ」
「大丈夫です!その内立てると思うんで、あの、降ろしてください」
「おれに命令するな。消されたいのか」
消されたくないです
しかしこれは恥ずかしいものがある。見ず知らずのお兄さんに助けられただけでなく、おぶられるなんて申し訳ない。
「すみません、ありがとうございます」
「あのまま死なれても寝覚めが悪いからな」
「……」
優しいんだか酷いんだか怖いんだかよくわからない人だ。
おぶられたまま村に着いた。その頃には十分足にも力が入るようになり、降ろしてもらえた。そのまま立ち去ろうとする二人に、このままじゃわたしの気持ちが収まらないのでなんとか引き留めてわたしのお店に寄ってもらった。
「酒場か」
「はい。お昼はランチメニューもありますが」
「一人で?」
「ええ。あまりお客さんも来ないんで」
さっきのも山できのこを採った帰りのことだった。
お礼と言ってはあれだが、ぜひ二人にご馳走したいと懇願するとお兄さんはフッと笑い店を出て行こうとする。
「あ…待って」
「夜。仲間を連れてまた来る」
「なかま?」
「酒、あるんだろ」
「はい。もちろん」
「あいつら酒に飢えてるからな」
そう言って二人はお店を出ていった。果たして仲間とは?そういえばお兄さんの名前を聞いていなかった。白クマは確かベポとお兄さんが言っていたような。とりあえず夜再び来ることを祈って今から準備をしなければ。今夜は忙しくなりそうだ。
ある日森のなか