「……」
「……」
「おいクソマリモ。それ以上近づくんじゃねェ」
「ああ!?……ちっ」
「サンジ君…」
「ご安心をプリンセス。プリンセスを守るのがナイトの役目」

以前ゾロとの筋トレ中、突然現れたサンジ君に良い感じに勘違いされたわたし達は、サンジ君に「なまえちゃんにマリモは三メートル以内に近寄るべからず」法を施行され、この通りサンジ君にパトロールされている。ゾロが少しでも近づくとサンジ君の目が光る。サンジ君の気持ちはひっっっじょーうに有難いが、正直やり過ぎだと思う。ここ最近全くゾロと話せていない。だからわたしは、サンジ君の目を盗みトレーニングルームと化してる展望台へと登る。案の定、ゾロはそこにいた。目が合うとふいっと逸らされる。

「なんだ?」
「んー。最近ゾロと話してないなあ、と思って」
「それ以上近づくとコックの野郎がうるせェぞ」
「いいの。わたしがゾロに近づいてるから」
「たく…ぐだぐだ言われるのはおれだっつーの」

と満更でもなさそうな表情で言う。よかった、いつも通りのゾロだ。こっちが変に距離を置いていたから、避けられているかと思った。

「それにしてもゾロは鍛え方が凄いね。そんな重たいダンベル…」
「テメエは相変わらずへなちょこだな」
「なにを!これでも日々鍛えてるのよ!」
「へえ?」
「あれから毎日腹筋してるもの!30回はできるようになった」
「まだまだじゃねェか」
「わたしにしたら大進歩だよ!」

見よ!このわたしの高速腹筋を!
この場で腹筋してみせたらおおっ、とゾロが声を上げた。昔のわたしとは違うのよ!

「はあはあ、疲れた…」
「スタミナ切れるの早ェ」
「すみません…調子に乗りました…」

とりあえず息を整え、壁に寄りかかりゾロの鍛錬を見学する。しかし本当凄いと思う。仕方も量も人の何倍も努力して、今の強いゾロがあるんだな。なんて考えながらボケーと見てると、ゾロが苦い表情でこちらを見る。

「そんなに見られると気が散る」
「え、あ、ごめん」
「乗れ」
「え」
「背中に乗れ」

これは。ゾロの鍛錬に触れるきっかけになった日と同じ。恐る恐る乗ると、直ぐに上下運動が始まる。この感覚、凄く懐かしい。それほど日は経っていないのに懐かしく感じるのは、今まで距離を置いていたせいだろうか。その間寂しかったのはなぜだろう。こうしてゾロの鍛錬に付き合うようになってから、ゾロと過ごす時間は凄く楽しかったし、充実していた。ちょっとだけれどわたしを鍛えてくれた。少なくともそれがきっかけでわたしも筋トレするようになったし。ゾロといると楽しいしあったかいし。

「わたし…ゾロのこと好き」
「!」

なのかな。
するとベチーン!とゾロが勢いよく床に倒れた。え、どうした?

「大丈夫?」
「テメエ…いきなりなにを…」
「え…え!?もしかしてわたし、声に出てた!?」
「無意識かよ…」
「え、いや、あのっ、これはっ」

熱が一気に顔に集中する。心臓が破裂しそうだ。なに口走ってるんだわたしは!誰かー!数分前のわたしを金属バッドで殴って!
あたふたしているわたしをよそにゾロは意外にも冷静で、身体を反転させるとわたしの方を向く。

「まさか先に言われるとは思いもしなかったぜ」
「え」

強い力で頭を引かれ、いつの間にかゾロの顔が横にある。反対の手で腰を抑えられている。まて、これは、デジャヴ

「おいクソマリモ!なまえちゃんの姿が見え」

やっぱり。







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