「で?」
「新しい仲間だ!」
「おまえこれ完全なる誘拐だろ」

ルフィが船に着く頃既にクルー達が揃っており、慌てて出航準備をしていた。なまえの説明に納得しなかった村人が海軍に通報したらしい。ログも溜まったので海軍が来る前にとんずらする。探しても見つからなかったルフィにナミはカンカンに怒っていた。ルフィが船に入ったと同時にサニー号は出航した。そして出航してから気付く。ルフィの腕がぐるぐると巻き付いている、人間のなまえがいたことを。
そして今に至る。なまえは隅っこでのの字を書きながらいじけていた。

「ごめんなさい…わたしの説得不足で…」
「いやこっちこそごめんなさい…このバカが」
「なんで謝るんだよ」
「100%あんたのせいでしょうが!」

ナミはルフィの頭を殴る。ゴムな為ルフィには無効である。

「海賊なんて嫌われものだもの。あんたが気を病むことはないわ。必要物資も揃ったしログも溜まってたし。ただログが溜まってなかったら別の話だけど」
「え…?」
「ログが溜まらないまま出航する訳にもいかないから。説得するって言ったのはあんただもの。そこはちゃんと筋通さなきゃ…ねェ?」
「え…あの…」
「羊毛って幾らで売れるのかしらねェ…?」
「……!!」
「顔が怖いぞナミ」
「冗談よ。それにもしもの話だし」
「おまえが言うと冗談に聞こえねェ」

やはり海賊は怖かった。

「それよりあんた、どうするの」
「あ…」
「可愛らしいレディが仲間になるのは歓迎するが、その気がなかったら降りるべきだな」
「生半可な覚悟で海賊は務まらねェ」
「なんだよオメエら!こいつが仲間になるのが気に食わねェのか!?」
「違うわよ。私達はこの子の本心を知りたいの。今回はあんたが無理矢理連れて来たか…いや今回もね」
「イエスともノーとも答えてねェからな」
「次の島に着くまでじっくり考えるといいわ」
「うん…ありがとう」

一人にしてほしい、となまえは展望台に閉じ籠った。至るところにダンベルが置いてある。鍛錬はできそうだ。
無理矢理だが、初めて乗った海賊船。麦わら帽子を被ったドクロのジョリー・ロジャー。ここが海賊船だと改めて思い知らされる。正直に言えばこのドクロに憧れ、自由に憧れ、海賊に憧れる時期もあった。只それは幼い頃の、未熟な夢だった。
手配書に載っている麦わら一味を生で見た。ルフィの話の通り、皆強そうだ。だからこそなまえはここに居れる自信がないのだ。自分は悪魔の実の能力者だが、羊になるだけだ。“肉食”のように凶暴性が増す訳でもない。だから、ヒトヒトの実を食べた人間トナカイの話を聞いて驚いた。トナカイが勇敢に戦っているなんて、凄いと思う。トナカイにできるんだったら自分でもできるのではないか。
ルフィは守ってやる、と言っていたが守られるだけは絶対いやだ。変にプライドの高いなまえは守られるだけのお姫様はいやなのだ。だが戦争に縁がなかったなまえは力がある訳でもない。
なまえは決意する。

「おいルフィ。夕飯になるからなまえちゃんを呼んできて差し上げろ」
「なまえー!飯だぞー!」
「連れて来いって言ってんだろうが…飯抜きにすんぞ…」
「ずみまぜんでじだ」

船上のコックに逆らうことは死を意味するのでルフィは素直になまえのいる展望台へと向かった。

「なまえー!飯だぞ!サンジの飯はスッゲーうめェんだ!」
「ルフィ」
「ん?」
「わたし、なるよ。仲間に」
「本当か!?やったー!」
「その代わりと言っちゃなんだけど」
「なんだ?」
「わたしを強くしてください。わたし弱いし、取り柄なんて羊になるだけだけど、みんなの足手まといにはなりたくないから」
「おう。まかせろ!」

幼い頃の夢に思いを馳せる。自由。それが海賊だ。
大好きな村を離れるのは正直寂しいのだが、なまえは脆弱な己に勝つために海賊になることを決意した。こうして麦わら一味に、また一人悪魔の実の能力者もとい非常食が加わった。

「がんばって生きようねチョッパー君!」
「?おう?」





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