目を覚ましたらルフィの顔が目の前にあった。吃驚して勢いよく起き上がると、見事にルフィの額とわたしの額がぶつかった。超痛い。額を抑えながら痛みにこらえているわたしをよそに、ルフィはなまえ!と大きな声で呼ぶ。

「ご、ごめ」
「生きてたー!良かったー!」
「わっ」

てっきり頭突きをしたことを怒っているのかと思ったが、違ったようだ。寧ろ喜ばれ、ぎゅっときつく抱きつかれる。力が強すぎて骨がミシっといった気がする。さっきの頭突きより何倍も痛い。

「ルフィ…ちょっと痛い」
「あ、悪い」

そう素直に謝ると、抱きつく力が弱まった。だが、弱まっただけで離そうとはしなかった。いつまでもこの体勢はちょっと…いやかなり恥ずかしい。少し抵抗してみるも、離してくれる様子はない。

「?どうしたの?」
「……」
「ルフィ?」
「なまえのバカヤロー」

今度は怒られた。なんなんだ。

「おれの手が届かないところに行くな」

低い声で話す。抱きしめられているので表情までは読めないが、これは本気で怒っている。わたしなにした?ルフィを怒らすなんて、よっぽどのことをしたんだ。うーん、と頭をフル回転させる。
確か、ルフィとウソップとチョッパーと四人で釣りをしていた。わたしが結構な大物を釣って皆に自慢していたら敵船が現れて、戦闘勃発になったんだ。わたしもそれなりに戦って、でもほとんどルフィがぶっ飛ばして。余裕だなって、ちょっと油断して。あれ、それからどうなった。

「起きたか」

必死に思い出していたら、ゾロが声を掛けて来た。よく見たらここ保健室だ。

「大丈夫か」
「え。うん」
「そうか。じゃあチョッパー呼んで来る」
「?うん」
「オメエ…状況わかってんのか?」
「あ!敵は?」
「とっくに海の藻屑になってる…てそうじゃねェ。テメエのだよ」
「わたし?」
「呑気なヤローだな。溺死寸前だったってのに」
「溺死!?」

ゾロ曰く、油断全開だったわたしは敵に海に突き飛ばされたという。泳げなかった訳ではないが、戦闘で体力が消耗していたのも手伝って、わたしは溺れかけたらしい。おまけに戦闘中で皆直ぐには気づけなかった。最初に気づいたルフィが助けようとしてくれたが、悪魔の力で海に嫌われているため叶わず。そしてゾロに助けられたという訳だ。

「そうだったんだ…。ありがとうゾロ」
「海賊のくせに溺れるなんて修行が足りねェ」
「すみません。精進します」
「それから、礼ならそこのひっ付いてる奴にも言うんだな。オメエが起きるまでずっと看てたんだ。飲まず食わずでな」
「え!?」
「じゃあな」

そう言ってゾロは部屋を出た。しーん、と静まる保健室。

「ルフィ。ずっと居てくれたの?」
「ああ」
「なにも食べずに?」
「おう」
「…ありがとう」
「おう。気にすんな」
「わたしはもう大丈夫だから、ごはん食べてきなよ。お腹空いたでしょ」
「腹減ってるけどいい」
「でも」
「おれ、なまえを助けられなかった」
「え」
「泳げねェから、ゾロが助けるとこを見ることしかできなかった。いくら手を伸ばしてもなまえに届かなかった」
「ルフィ…」
「ゾロが助けてくれたからなまえは助かったけど、嫌だ。なまえが助かって嬉しいはずなのに、嫌だ」
「ごめんね。ごめんねルフィ」
「泳げなくても海に落ちなきゃいいって思ってた。けど仲間が、なまえが海に落ちたら助けれねェ。そんなのスゲー嫌だ」

ルフィがなぜ怒っているのかわかった気がする。助けれなかった自分を責めているんだ。ルフィには沢山助けられてるし、救われている。お互いに不足している部分を補い合っている。だからルフィが全部背負わなくていいんだ。それが仲間なんだ。わたしは諭すように背中を優しく撫でた。伝わったのか、身体がゆっくり離れる。

「なまえ、おれの手が届かないところに行くなよ。傍にいろ。船長命令だ!」




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