「島が見えたぞー!」

我らが船長の掛け声で、久しぶりに島を肉眼で見ることができた。ここ何日ログポースに従いこの海を航海していたが、いかんせん島に辿り着かない。食料も底を尽き死にかけていた時だった。
腹が減っては戦はできぬ、ならぬ冒険はできぬ。とりあえず皆で食事をし、その後各自バラけることにした。今回の船番はゾロだ。いや今回もだ。
わたしはナミからお小遣いをいただき買い物をする。いつもはナミとロビンと一緒に買い物をするが、今日はそそくさと二人は行ってしまった。薄情だ。ていうかわたしは寂しいぞ。悲しいぞ。まあ置いてかれたのはしょうがないので一人買い物をすることにする。

「………」
「………」
「………………」
「………………」
「…………………ルフィ?どうしたの」
「どうもしてねえぞ」
「そ、そう」

なんでルフィが着いてくるのだろうか。少し距離を置いて後ろから着いて来ている。いつもは肉だー!とか冒険だー!とか肉だー!とか肉だー!とか言って暴走しているのに。振り向けばルフィがいる。謎だ。

「ルフィ。今日は冒険しないの?」
「おう、今日はしねえ!」
「珍しいのね」
「明日するからいいんだ!」

この島は三日でログが溜まるらしい。賑やかな街もあればルフィがワクワクしそうな森もある。てっきりそっちに行くと思っていたが、珍しいこともあるもんだ。まあ好きにすればいいけど。しかし、どこに行ってもルフィが着いて来るのは正直困った。監視されているような気がして嫌だ。

「わたしに着いて来ても面白くないよ」
「面白いか面白くねーかはおれが決める」
「なにそれ」
「いいからなまえは買い物してろよ」

全く意味のわからん船長である。なんだか気にするのがバカらしくなったので、思う存分買い物することにした。ナミにいっぱいお小遣いもらったもんね。女の買い物は長い。飽きてルフィもどっかに行くだろう。そう思ってたのに、店を出たらルフィはそこにいた。

「長ェぞなまえ!」
「待っててなんて言ってないわよ…」

はあ、と溜め息が出た。今日のルフィはよくわからない。なんだかルフィばっかり気にして疲れてしまった。早いけど船に戻ることにする。すると後ろから腕が伸びて来て、いつの間にか両手にあった荷物が無くなっていた。振り返るとわたしの荷物を持ったルフィの姿。

「帰るのか?じゃあ一緒に帰ろう!」
「それはいいけど…荷物返して。わたし持つから」
「持つってこれ結構重てェぞ」
「大丈夫よ」
「おまえ女なんだからよ。こういうのは男に任せろ」
「え」

えええええー!なに!?ルフィが紳士!?脳みそまで肉でいっぱいのあのルフィが!?あなた本当にルフィか!?ショックが大き過ぎてきっと心の声が顔に出てるだろう。ルフィも「失敬だなおまえ!」て言ってるし。きっと明日は雪が降るだろう。あ、ここは偉大なる航路だった。

船に戻ると既に皆戻っていた。お早いお帰りだ。

「デートはうまくいった?」

ニヤニヤと笑うナミがこっそりと耳打ちする。わたしは意味がわからずポカンとしていると殴られた。酷い。

「なに?私が協力してあげたのにうまくいかなかったわけ?」
「いや、意味がわかりませんナミすゎん」
「ちょっとルフィ!あんたなにやってたの!?」
「なんだよ。ちゃんとでえとしてきたぞ」
「え?ルフィ?」
「まあ、なまえの荷物を持って来た辺りちゃんとやっただろうけど」
「え?あのナミ、話がよくわからな…」
「ルフィがなまえとデートしたいって言うから、教えてあげたのよ。『デートとは、どこに行こうとも男は黙って女に着いていく。買い物にも付き合って、荷物は男が持つ!お金もね』て」
「…………(それでか)」
「シシシッ、今日はなまえとでえとしたからな!明日はなまえと冒険だ!サンジ!海賊弁当二人分!」
「テメエッ…クソゴム…!なまえちゃんとデートしただと…!?おれもしたことないのにっ」

果たしてあれはデートだったのだろうか。その前にルフィがわたしとデートしたかったってどういう意味だろう。そういう意味に取っていいのだろうか。教えて船長。




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