「ルフィ。今まで黙ってたけど実はわたし、シャンクスの仲間なんだ」
「えー!?本当か!?」
「うん」
「シャンクス…懐かしいな…。会いてェな」
「会いたい?」
「会えるのか!?」
「ルフィはシャンクスが好き?」
「当たり前だ!命の恩人だもんな」
「わたしは?」
「もちろんなまえも好きだぞ」
「じゃあ、選んで」
「ん?」
「シャンクスか、わたしか」
「んん?」
「シャンクスは今、近くにいる。近い内に会えると思う」
「おお!」
「その時わたしはこの船を降りる」
「え…え!?なんでだ!?」
「わたしはシャンクスとルフィを導く者。その役目を果たせばわたしはお頭の元に戻る」
「導く者?意味わかんねェ、なまえはおれの仲間だ!船を降りるのはおれが許さねェ!」
「ルフィ…」
「なまえはシャンクスの仲間だけど、今はおれの仲間だ。今の船長はこのおれだ!おれがダメだって言えばダメなんだ!」
「じゃあ、シャンクスに会えなくてもいいの?わたしを選べばシャンクスには当分会えないことになる」
「そりゃシャンクスには会いたいさ。けどそれは今じゃなくてもいい」
「……」
「生きてりゃいつでも会えるしな!」
「ルフィ」
「だから、なまえはここにいろ。なまえが隣にいるとなんかあったかいんだ」
「ルフィ」
「なまえがシャンクスのとこに帰るって言っても絶対ェ帰さねェ!おれ達は海賊だもんな、欲しいものは奪うまでだ!」
「ルフィ」
「なまえはおれのもの!シシシッ」
「ルフィ!!!!!!」
ルフィが目を開くとそこには青い空と、泣きそうな顔のなまえがいた。周りにはホッと胸を撫で下ろすクルー達。ルフィは今の現状について行けなかった。
「大丈夫?ルフィ、あなた釣りの最中に掛かった魚に引っ張られて海に落ちたのよ」
「声を掛けても揺さぶっても目を覚まさない。完全にのびていましたよ。ゴムだけに。ヨーホホホホホ!」
そういえば、とルフィは思い出した。いつものようにウソップ、チョッパー、ブルックと四人で釣りをしていたら結構な大物が掛かり、力に負け海に引っ張られた。油断した。海の中の記憶はない。あるとしたら
「なまえ!」
「え、キャア」
「おまえシャンクスの仲間なのか!?船降りるのか!?」
「は、え?わたしが赤髪の仲間?降りる?なんで?」
「だっておまえが言ったんだろ…」
「そんなこと一言も言ってないよ…。大体、わたしがあの赤髪の仲間なわけないでしょう。わたしの船長はルフィだけよ」
「…なまえー!」
「んぎゃあ、ルフィ、苦しい!」
今、目の前にいるなまえをきつく抱きしめる。どこにも行かないように。苦しい、と背中を叩く仕草さえ愛らしく感じた。
夢でよかった。ルフィは心底そう思った。
美しい嘘