この船の中で、ルフィに次いで大食いなのはきっとなまえだ。
大食いと言ってもルフィのように底なしの食欲魔神という訳ではなく、よく食べるようになったのは最近のことである。その真相は隣でルフィがあまりにも美味しそうに食べるのでつい自分もつられて沢山食べてしまう、ということらしい。成長期だから大丈夫!と言い訳していたなまえだが、後悔することになる。

「なまえが死んでるー!い、医者ぁ!」

脱衣室でなまえが倒れているところをチョッパーが発見する。むくっと起き上がると更に驚くチョッパー。勝手に殺すな。風呂上がりのため素っ裸だが相手は医者のチョッパーなので許すことにする。なまえはチョッパーの両肩を掴む。

「チョッパー…寝れば10キロ位痩せる薬ない?」
「ねーよ!」
「ううっまさかこんなに増えてたなんて…!」

日々の暴食をひたすら後悔する。一流コックの料理が三食おやつ付き。ルフィの如く食いまくり、蓄えのみで燃焼されなかったなまえの身体に当然のツケがまわって来たのだ。とんでもない体重の増加。なまえは死にたくなった。このままでは大好きなルフィに嫌われる。よし!となまえはダイエットを決意する。

「チョッパー!これは二人だけの秘密よ」
「お、おう。わかった!二人だけの秘密だ!」

二人だけの秘密、と強調してほくそ笑むチョッパーの姿があった。
早速なまえはその日の夕食を控え目にした。控え目というか、今までの食事量に戻っただけだ。

「んん?なまえ、もう食わねェのか?」
「うん」
「珍しいな」

じゃあこれはいらねェか、とサンジが持ってきたのは新鮮な魚のマリネ。魚好きななまえの為に作ってくれた。サンジもなまえがよく食べると心得ているので他の女性クルーより多めに作ってくれる。

「食わねェならおれにくれ!うんウメー!」
「て言いながら食うなテメーは!」
「ご、ごめんねサンジ君。いつもありがとう」
「勿体ねェ言葉さレディ」
「あとわたし、これから食事の量ナミ達と同じにしてもらっていいかな」
「え!?」

チョッパーを除くクルー全員が驚いた。よく食べるようになったのは最近からだが、なまえ=食べる子が定着していたのでそのなまえが食事を減らして欲しいと言うのは、事件である。

「どうしたんだ!?どっか痛ェのか!?」
「テメーじゃねェんだ。なまえちゃんは繊細だから、どこか具合が悪いんだよ」
「そうか頭か」
「そりゃテメーだクソマリモ!」
「おれは痛くても食うぞ」
「(二人だけの秘密だ)」
「ふふ、ダイエットでもするのかしら」
「!!(なまえ、早速バレたぞ!)」
「だってロビン、10キロも増えたんだよ。ぶくぶくのでぶでぶだわ」
「(えー!?二人だけの秘密は!?)」

短期間で10キロも増えるのはかなりショックである。早々と秘密をバラされたチョッパーもショックである。事情を知ったクルーもそれはしょうがない、と納得するが一人は不満なようだ。

「バカかおまえ」
「バカ!?」
「そんなん気にしてたら美味い飯も美味く食えねェし、腹一杯になんねェぞ」
「そうだけど…」
「ほら、おれのやるから食え!」
「え!?」

今度はクルー全員が驚いた。あのルフィが人に食べ物をあげたのだ。しかも自分のを。人のは奪うも誰かに譲るなんて天と地がひっくり返る程ありえない。おまえ本当にルフィか?全員がそう思った。

「おまえら失敬だな!おれだってこういうのはわきまえてる」
「じゃあこれ貰い」
「そいつはおれのだー!食うんじゃねェウソップ!」
「言ってること矛盾してんですけど!?」
「なんでおれがウソップにあげなきゃいけないんだ!おれがあげたいのはなまえだ!なまえ、ウソップに食われる前に食え!」
「え、でも」
「 食 え !」
「は、はい!」

意味わかんねえ…て空気が流れる中、ロビンは全てを悟ったようでクスッと笑みを溢す。

「愛されてるわね、なまえちゃん」

ロビンの呟きは騒ぎで揉み消され、誰にも聞こえることはなかった。実は体重計は元から壊れていて、プラス10キロになるということもロビンしか知らない。




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