暖色の光が降り注ぐ中、音のない空間を虚ろな双眼が見つめている。
熟した林檎のような紅色、一点だけに集中して動こうとしない。
人工的な大地の上と雑音を遮断する透明な壁。
いつもと変わらない、感情が読み取れない漆黒の瞳に映し出している煌めき。
鋭く研ぎ澄まされた孤高の刃の如く独特の雰囲気をもつ凜とした横顔。
背筋を伸ばしても小柄な体格は、硬直して、仁王立ち。
言葉など本当に形を保たないようで耳に入っていないらしい。
何度と話しかけても反応しない。
みずみずしい桃のような口唇がほんの少し開いたまま、震えていた。
静かな呼吸のたびに無色が曇り白くなる。
こんな状態の少女、昴の隣で何が出来るわけでもなく俺は立ち尽くしている。
先程から小一時間何の変化もない。
呆れて不自然な笑みも浮かぶ。
天上の神様がケーキの蝋燭を消そうとでもしたのか風が強く吹きはじめ、昴の長い黒髪が靡き俺の顔に容赦なく当たる。
その一本一本、まるで高級な絹糸が俺をつつく。
痛いとは大袈裟だろうが不快極まりない。
それでも文句一つ言わず黙って耐える俺は偉いだろう。
といっても関係ないことには変わりがない。
何しろ俺を気にしない昴。
そんなことわかりきったことだ。
一人、心の中で自問自答。それはただの暇つぶし。
暫くしても動き出しそうにない彼女の姿を見つめつつける。
それだけで安堵を憶えた俺は、阿呆だろう。
昴もきっとそう罵倒するけれど、その後は必ず笑ってくれる。
そんなことだろうからいいか、と俺は一足先に微笑んでいた。

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