人が死んだらお星様になるのか?

いきなり突拍子のない質問をしてくるから言葉を失った。
しかもなんという幼稚なものか。開いた口が塞がらない。
いくらなんでもそんなこと未だに信じているのか。
未だにサンタさんを信じているのと同じくらいのレベルだぞ。
しっかりしろ、馬鹿。いや、俺も。いいのか、これが当主様で。
当の本人は俺が答えるのを健気に隣で待っている。
恐ろしいほど整った顔立ちで表情一つ変えず、漆黒の瞳は俺を射ぬくような視線を送り続け、感情を読み取らせようとはしない。
はっきり言って恐い。
後ずさると、一歩踏み込まれ逃げ場をなくされた。後ろに壁があるなんて、こういう場面に限って。
彼女の背後に茜色の空が迫っていた。
もう夕方だ――気を逸らそうとしてたら彼女の形良い眉が片方だけあがり、いかにも不機嫌だと腕を組んだ。
どう答えよう、真面目に。
ふざけてみる、はぐらかす――ダメだ。
無事にいられる気がしないでもない、が。
否定する――別の方向からまた難題をぶつけられそうだ。
「じゃあ、結局はどこへいく」
「何故、誰がこんな嘘を流した」とか。
知るか、この平凡な俺が。肯定しても似たようなことになりそうだなって、最初に挙げたやつでいくか。はぐらかすくらいならば幾分か他よりマシな気がしてきた。
そうだ、必死に頑張れば逃げ道も見えるかもしれない。
拳を握りしめると俄然、力が湧いてきた気がする。
ゴクリと喉が鳴り、彼女と向き合ってよくわからない覚悟を決め、あのな、と彼女の両肩を掴んだ。予期してなかったか、彼女は驚いたのだろうか。少しだけのけ反り、半歩だけ下がった。
瞬きする大きく神秘的な黒耀石。世界を吸い込んでしまいそうなくらいの暗き闇底が揺らいでいる。
意を決した言葉を出す前に後ろから第三者が騒ぐ声が聞こえてきた。
ヤバイ、この体勢は―在らぬ誤解を生んでしまうのには十分だったかもしれない。
漏れた舌打ちに昴はケラケラと笑い出した。
「星になるか……現物が見れるかもしれないね」
なんて嬉々した声で呟いている姿を睨めつけることしかできなかった。ひょっとして仕組んだか、貴様!
嗚呼――さっきの人を今から追いかけて間に合え、だけどなんと言おうか、もう!
 

(中学のノートの片隅にあったもの。我ながら滅茶苦茶で可愛い(*ノωノ))

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