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2023.01.03   
 少年が目を覚ましたときには太陽はもう頭上を通り過ぎようとしてあった。寝過ごした――そうわかっても動きだそうという気は湧かない。寝ぐせでぼさぼさであろう栗茶色の髪をくしゃりと掻いてから額に左腕を置いて、天井とにらめっこを決め込んだ。大きく息を吸って、吐く。そういえば――と少年宗太は昨夜を思い返した。
 夜中だったか、騒がしかった。どこからかの早馬が寝静まった里に駈け込んで来たのだ。宗太は偶々、その時刻に起きていて、その様子を建物の二階の窓からこっそり見ていた。幸いなことに少年は夜目が利いた。視線の先にいたのは見知った少女と知らぬ女、子供がいる。神経を尖らせて耳を澄ませたが、さすがに潜めた音を拾うことは出来ない。ただ、その表情は読み取れる。そんなに深刻そうな顔じゃないな――宗太は心安い間柄の少女の顔を見て思った。そしてなにより遅れて見つけた青年の姿でなんとなく納得した。でも、どうしてか胸騒ぎが去らない。眼も冴えた。布団に潜ってもずっと朝まで起きている気がした。そんな感覚がした。実際はいつのまにか意識は途切れていたのだが。
 流石に窓から差し込む光が眩しくて、小さな呻き声を漏らしながら、宗太は仕方なく起きようと思った。水。顔を洗いたい。喉を潤したい。さて、いいかげん寝台から抜け出そう。 

at 22:56
2022.08.08   
ななしのななし、もうわけわからない 

at 03:28
2022.07.23   
 どうしても、というほどのことない些細な願いであったからきっと誰も知らない――いや、あの子しか知らないことだった。私とあの子、二人だけの秘密。そう、甘いような酸っぱいような幼いころに交換した夢。今はもう忘れてしまったかしら。大袈裟すぎるわね。でも私はこの山に登って、これを思い出した。あの子は私の代わりに海を見てくれただろうか。

  

at 17:42
2022.07.23   
てすと 
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at 17:42
2021.06.18   
 ――世界は丸い一つの極彩色の宝玉から生まれたという。
 それは渾沌の中で生まれた龍らが抱いたものであり、特色のない箱庭だった。
 そうこの最初の世界はあらゆるものから閉ざされたものだった。かの龍が死ぬときに七つに砕け、弾けて、飛散した破片はこの世界を広がった。
 それぞれが龍の屍とともにこの大地を創り、ややしばらくあってからそのままそこへ宿った。はじめこそは何もなかった大地だったが、複雑に豊かな色が交わり、さらに多くの命を芽吹かせ、そして最後に欠片の残滓が依り代を頼りに集まり小さな竜へと姿を変えたのだった。その竜が目覚めた場所だけが不毛の地になっていたという。
命あるものはなにものであれ、そこで生きることはできない禁断の地。
そこはいつかの龍が還るための場所。

 いま、この大陸には七つの国とそれを一つと纏める宗主国がある。古に龍が住まったとされる玉流山を手にして大陸の覇者となった大国は創世の伝説に沿って領地を七つに分けた。そして、それぞれにそれぞれの色を宿した玉を与えた。それはやがて七つの国になった。

 中央から少し東にずれたところにある山間にその邑はあった。遠くからはてっぺんがやたら平たいただの大きな山にみえるのだが、その山には大鍋のような窪地があって、泉も川があって、小さな湖、林、ちょっとした箱庭のような場所だった。当然の如く、そこに人里が作られていた。この人里はどの国にも属さないとある集団が遥か昔から治めていた。中心から少し北の丘にその里の重要な建物がある。黒塗りの木材でどっしりと構えた楼閣からこの里を隅々まで見渡せる。晴れた日にはそれは遠く、山の向こうの大陸中心の玉流山まで。

 かの山も誓約を逃れたこの異郷を見つめるように天空の城を構えていた。その欄干に手をかけて白い少女は飛んだ。その日は太陽が闇に呑まれて、天は昏く、残された月だけが皓々と輝いていた。

 

at 21:30
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