私たち人間という生き物は求めている。愛という形に表すことの出来ない不確かなモノを。



「まだ、青峰君のこと好きなんですか?」
ふと、読んでいた小説から顔を上げた黒子は前の席である。
「そんな訳ないじゃん、いつの話してんの」
彼の方を見ずに、パックジュースのストローを口に含む。私は、平常心を装えただろうか。
まさか、このタイミングで昔好きだった人の名前が出てくるとは思わなかった。
黒子の目はなにも映っていないように澄んでいた。
私はあの瞳が苦手だ。いつも自分を見透かしているような気がするから、自分の知らない自分まで見えているんじゃないか、と不安な気持ちになる。
「なんでそんなこと聞くの?」
軽く黒子を睨みつけると、彼は少し笑った。
「特にはありませんが、少し気になっただけです。」
淡々と黒子は言った。
そのどことなく意味深な感じが嫌で、加えていたストローを噛んだ。
「行儀が悪いですよ」なんていう黒子の言葉は無視した。
なんでこんなに苛々するんだろう。わからない、わからないから苛々する。負の無限ループ、スパイラル。
あーあ、私も黒子みたいになんでも見透かせたら楽なのに。
そしたらこの訳わかんない感情が分かるかもしれない。

小説に視線を戻した黒子は、今度はこっちを見ずに言った。
「青峰君、バスケしてるらしいですよ」
だから、なんなんだ。
青峰って、名前を聞いただけでばくばく煩くなる私はきっとどうかしてる。
噛み続けていたストローは、口に含んでいたとこだけ平べったく、ボコボコになっていた。
まだ、少ししか減っていないパックジュースにげんなりした。
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