しぶしぶ、福井の後ろをついて歩く。ラブレターの差出人があたしだとばれてはいけないので彼について行く。どこに向かってるんだ。そんな疑問を抱えながら、ラブレターは福井の右手にしっかり掴まれていた。

「お、劉じゃん」

ひらひらと、福井が前から歩いてきた身長がめちゃくちゃ高い(たぶん岡村ぐらいある)男の子にラブレターを持った手を振る。それに気付いた男の子の視線はラブレターに向けられる。

「どうしたアルか?」
「オレさラブレターもらっちゃってよー」

差出人捜してんだよ。福井の言葉は続く。やたら、馴れ馴れしいというか身長が高いから同級生かな?と思ったが、上履きの色を見る限り二年生のようだ。福井、後輩にどんな教育してるんだ。
少し、見上げるとアルアルいってる彼と目が合った。「なにアル」いや、アルってなにアルだよ、こっちは。あたしの怪訝な顔に気付いたのか、福井は「劉は留学生なんだぜ」と説明してくれた。アル、とつけてるからきっと中国人なんだろうけど、アルって、うん。

「でさ、なんか心当たりねぇ?」

ピクリ、留学生の彼の眉毛が動く。視線は何故かあたしに向けられている。福井はラブレターを手の中で裏返したりしているのに夢中でで、気付いていない。まさか、ごくりとあたしの喉が動く。見られてたとか、考えすぎだよね。嫌な汗が背中を伝った。

「きっと、そこ」
「シャラアアアアアアアアップ!」
「はあ?」

「うっせぇよ!」と頭に拳を落とされた。留学生くんはニヤリと笑うと「やっぱなんでもないアル」と、どこかへ行ってしまった。福井に殴られたところは痛むが、ばれなかっただけマシだ。
「なんだよ変な奴」と福井は漏らしたが、あたしの奇行を深く追求しようとはしてこなかったので、内心安堵した。
まさか、見られていたとは…。名字名前一生の不覚である。
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