緩やかな春の日差し、あたしは睡魔に襲われていた。黄瀬の部屋は日当たりがとてもいい。だから、室内はちょうど良い暖かさを保っていて、のんびりとした空気が漂ってる。長閑だ。
ふぁ、と欠伸をすると横に座っていた黄瀬が読んでいた雑誌から顔を上げた。

「眠たい?」
「…だいじょーぶ」
「今にも瞼がくっつきそうなんスけど」
「大丈夫だって、ふぁあ」
「寝てもいーよ」

あたしの腕を引っ張って立たせると黄瀬は、普段自分が使ってるベッドあたしを誘導した。大丈夫だって言ってんのに、ふぁ、あ、また欠伸でた。それを見た黄瀬が苦笑い。仕方ないじゃん、温いと眠たくなる。
ぽすん、黄瀬のベッドあたしは倒れる。枕に顔を埋めると黄瀬の匂いがした。匂い嗅ぐとか変態っぽいな、うん。でもなんか、その行為を止めたくなくて、うつ伏せで枕にもっと顔を埋めた。なんか安心?ほっとする。
そういえば、この枕黄瀬が毎日使ってるんだよね。というか、今寝てる布団もベッドもか。そう考えるといやらしい気分になってきた。あー、やばい。恥ずかしい。
眠気がどっかに飛んでってしまったので、やっぱり起きよう。そう思って両手に力を入れたら、足元でベッドのスプリングが軋んだ。
あれ?と思い枕からそちらに顔を向ける。黄瀬の腕が伸びてきて、あたしは仰向けになった。素早く黄瀬があたしのお腹より少し下に跨がった。やらしい。いけないことしてるみたいだ。そう思うと恥ずかしくて顔に熱が集まる。あたしの顔真っ赤だわ。

「はは、顔真っ赤」
「……なにしてんの」

余裕の表情を見せる黄瀬は、あたしの質問には答えずに、少し身体を倒して、右手でほっぺたを撫でる。そして、その手が首をなぞって、鎖骨、そして胸へ。ごくり、黄瀬が喉を鳴らした。さっきまでの余裕は何処へやら、真面目な顔になった。
黄瀬の手が触れたとこが熱い、触られてる胸がたまらなくいやらしい。あたしたち一線越えるんだろうか。下着可愛いの付けてたっけ?脇の毛剃り忘れてた気がする。そんなことを頭の隅っこで考えてたけど、あたしの緊張はピークだった。臍で茶は沸かせないけど、額でお湯は沸かせる気がする。やばい、心臓が口からでそう。のどがカラカラと渇く。黄瀬の手があたしの胸の上で止まっている。かすかにその手は震えていた。

「あー、やっぱ無理。ずっげぇばくばくする」
「え、ちょ、黄瀬!」

いきなり倒れて来たと思ったらぎゅ、とあたしを抱き締める。重い、苦しいわ!、と背中を叩くと、ごろん、今度はお互い横に寝そべった状態で向かい合った。
ぎゅ、と黄瀬の両手が背中に回る。足も絡められる。やらしいような、ほっとするようなわけわかんない感情が胸の奥に広がる。恐る恐る、黄瀬の背中に腕を回すと頭の上で笑われたような気配が、くそぅ、あたしはコレが精一杯なんだよ。腹が立ったので顎の辺りに頭をぐりぐりと押し付けてやった。ぺしん、軽く頭を叩かれた。

「発情期かよ、黄瀬」
「違うッスよ、なんかイケる気がしたみたいな」
「わけわかんないし」

ははは、お互いに笑う。
目を閉じれば、どちらかわからない少し早い心臓の音が響いて、また笑った。

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