「…ど、どいて欲しいなぁ、なんて…はは」

先ほどからあたし前に立ってじりじりと距離を詰めてくるのは、同じクラスの花宮くんだ。彼とはコレと言って接点がないので、この状況に戸惑いを隠せない。
彼があたしに、一歩距離を詰める。つられてあたしの足も一歩下がる。一歩、また一歩。花宮くんは無表情だ。そのお陰で、この行為が少し気味悪く感じる。

とん、と背中に壁がぶつかる。花宮くんの口がニヒルに歪んだ。冷や汗が背中を伝う。ちょっと待って下さい。ほんとなんなんだ。「…なんなの」ようやく発する事が出来た声は少し掠れていた。あたしの言葉が耳に入ったのかそうでないのか、ゆっくりと花宮くんはあたしに向かって手を伸ばしてくる。恐くなってきたあたしは、後ろに下がるが背中に感じる無機質な壁に体の体温が一気に奪われたようだ。
花宮くんの手はあたしの頬を、撫で髪の毛を指で遊ばせそのまま、壁に手をついた。花宮くんの指は、骨っぽくて長かった。男の人の手だった。

「ほ、ほんと、なんなの?」
「なんだろーなァ」

彼の目を見て問う。すると、鼻の頭がくっ付きそうなほど距離を縮められて、語尾が弱くなった。花宮は楽しそうに口を歪めてあたしの髪を弄る。どきん、心臓が跳ねる。わけがわからない、普段ではありえない状態に混乱している。このうるさい心臓は、きっと混乱しているだけだ。花宮くんにときめいたとかそんなことあってたまるか。

「なに、恥ずかしがってんだよ」

視界から、花宮くんが消えた、と思ったら唇に感じる温かさ。まさか、と思った頃には既に遅くて、あたしの頭は花宮くんに押さえられて、腰にまわった腕がやらしい。ぬるりと、花宮くんの舌が口の中に入ってくる。ぬるぬると、口の中を舐めまわされる。頭に回された腕のせいで、逃れることが出来ない。息が苦しくなって、花宮くんの胸のあたりを叩くと、彼は離れた。飲み込めなかった唾液が顎を伝っているのがわかる。
「やらしー顔」花宮くんは、楽しそうに言う。腰に回された手は、お尻に移り撫でまわされている。

「ほんと、なんなんの」
「もしかして、ファーストキスとか」
「だから、」
「たまんねーな」

ちゅ、軽いリップ音と共に乗せられた唇。ほんとわかわかんない。

波琉さんへ
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