ガツン、背中に衝撃が走る。押し寄せる圧迫感に咳き込む。そんな様子をあたしを突き飛ばした張本人は怒気を含んだ目で見降ろしていた。わけがわからない、あたしの頭は混乱していた。


ほんの数分前、家に帰ろうと教室を出た。ふと、名前が呼ばれた気がして振り向くと、黄瀬がいた。黄瀬は同じクラスでそれなりに話す部類だと思う。黄瀬は、いつものように人懐っこい笑みを浮かべていた。他愛のない事を話しながら、下駄箱へ向かう。その時だ、普段人気の少ない空き教室に手を引っ張られ、冒頭に戻る。
先ほどまで、普段となんら変わりなかったのに。普段と違う黄瀬の様子に冷や汗が止まらない。なんか、やばい、そう本能が言っている。
黄瀬は、深く息を吐いた後、前髪を掻き上げた。視線はあたしから外さない。すると、ずいっと距離が詰められる。お互いの鼻の頭がくっつきそうなくらい顔を近づけられ、恐かったはずなのに、顔に熱が集まっていくのがわかる。顔を伏せると、黄瀬の口がいびつに歪んだのがわかった。

「ねぇ、なんで他の男と喋るんスか?オレの気持ちに気付いててやってるんでしょ、性質悪いっスね〜」

呑気に語尾なんか伸ばすけど、彼の雰囲気はピリピリと痛いものを放っている。わけわかんない、と口から出た言葉は掠れていて、酷く情けないものだった。黄瀬の喉が上下する。彼の腕が伸びてきてあたしの髪を梳いた。

「はあ、ここまで言ってわかんないとか、こっちの方がわけわかんないっスよ」

髪を梳いていた手が、鎖骨に伸びてくる。さわさわ、と指先でそこをなぞられるとくすぐったくて、ビクリと体が跳ねる。黄瀬の言葉の意味を尋ねようと口を開いたら、それを遮るようにかれの言葉が降って来た。

「とりあえず、オレ以外の男と話すの禁止ね。約束。破ったらこれより酷い事するから」

さあ、と背中が冷える。目の前にあった黄瀬の顔が消え、先ほどまで、触れていたそこに温かいものが触れる。黄瀬の舌だ。気付いたあたしは慌てて静止の言葉をかけるが、本人は行為をやめる気はないようだ。刹那、鎖骨に痛みが走る。喉の奥から声が出る。

「じゃあ、今度から気をつけてね」

そう言った、黄瀬は笑ってた。狂ってやがる。

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