小説 | ナノ



「赤也、か・・・?」




再びの出会いは突然。でもそれは仕組まれたものだったのかもしれない。



中学の卒業を間近に控えた2月、盛大な衝突があって別れたのを最後に柳さんとの連絡は途絶えていた。それでも、先輩同士の中はいいし、俺も柳さん以外の先輩たちとは仲がいいままだったので近況は知ってた。既にその盛大な衝突の内容は覚えていない。おそらく進学関係のこと、だったように思う。優秀な彼と、せめて中位を彷徨うような俺の進学が重なることはなかったのだ。


バイトを終え、いつのもの道を歩いていると、目になじむ細長い影。それが彼だった。成人式後の同窓会の帰りだろう。


5年の時を経ての再会、今更何を話せばいいのかわからない。とはいっても直接の会話はないものの、ほかの先輩を通じて情報が伝わっているのも知っているし、勿論俺にも伝わっている。そんな時ふと思い出す、いつか聞いた丸井先輩の一言。


(「柳、ずっと彼女いねえって言ってたな」)








「・・・久しぶりだな」


「・・っす」


「すこし・・・公園にでも寄らないか?」


「いいっすよ」


特に断る理由も思い浮かばなかったし、この微妙な雰囲気の中でさえも、また彼と一緒に居れるということがうれしかった。なぜなら俺はあれからもずっと、柳先輩のことが忘れられなかったから。


「大体のことは、精市達から聞いている」


ホットコーヒーを渡され、ベンチに座る。柳さんは前に立ったまま。


「赤也、俺は・・・・俺は確認したいことが一つだけある」


見上げると月の明かりで逆光になって、表情がうまく読み取れない。


「・・・今まで、彼女がいないというのは本当か・・・・?」


「!!なん、」


「俺も、なんだ。赤也、俺もあれから、赤也が忘れられなかった。後悔、していた・・・・っ!

しかし、別れ方があんなものだったために、自分から連絡を取るのを恐れていた。あいつ達から話を聞くのも怖かった。でも、あいつ達は全てわかっていたようだ・・・だから俺に赤也の話をしたのだろうし、今日だって・・・」


「あの道ね、俺が絶対にバイト帰りに使うんっすよ。先輩たちはそれ知ってる・・・・・」


はっと顔を上げると、小さく顔を縦に振った。


「・・・・俺はもう間違いを犯さない。もう、離れているのは辛いんだ・・・赤也、時間は・・・・元に戻すことはできない。しかし、新しくやり直すことはできるだろう?」


少し、不安そうな笑顔でこちらに手を伸ばす柳さん。


・・・この手をもう一度重ねることができる日が来るなんて思っていなかった。


そっと手を伸ばし重ねると、記憶の中よりも少し大きくなった手に勢いよく引かれ、柳さんの胸に飛び込んだ。



「もう、離さない・・・・っ」



しっかりと俺の体に手を回して、今までの想いを吐き出すように耳元で囁かれた言葉に、はい、と頷くと同時に涙があふれた。










――もう一度2人の時間をはじめよう


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