「っぐ、・・かはっ!」
今俺がいる場所、部室後の誰もいない部室棟裏。そして現在の状況、俺、リンチされてます。
なんでこんな状況にいるのかといえば、それはあまりに単純。2年の俺がほかの3年を差し置いてレギュラーになったから。そのことが部長の口から発表された日から、俺へのイジメは始まった。
元々こんな性格だし、今までもいじめられることはあったから大して気にはしていなかった。だって、俺よりテニスが弱い奴らの相手をしている暇なんてない。
そういう態度がさらに気に食わなかったのか、相手は暴力という手に出た。
俺のロッカーにあった、『部活後、部室に一人で残れ』というメモ。
このメッセージの意味が解らないほど俺は馬鹿じゃない。そして、3年のうちの一人が来て、連れて行かれればやはり、先輩が数人並んでいた。
「お前ほんと生意気なんだよ。俺たちが警告してやってる時点でさっさと辞めりゃあいいものをさ」
「・・・先輩達、なに勘違いしてんのか知んないっすけど、ここは王者立海っすよ。強い奴がレギュラーになる、当たり前のことっしょ」
「・・俺たちが弱いって?」
「弱いからレギュラーになれないんじゃないっすか?・・・いい加減わかれよ」
吐き捨てるようにそう告げてやった途端に、一人が俺の背に回り手を腕を固定したかと思うと、他のやつの拳が腹に入った。そして冒頭に戻る。
「ケホッ・・・・っはなせ・・!」
「お前さ、先輩に対する口の利き方も知らねえのか・・よっ!」
バキっと次は左頬。さすがに顔はないと油断してたから口の中が切れた。血の味がする。
「いってぇ・・・」
「喧嘩強いんだろ?お前と同期のやつが言ってたぜ?ほら、悔しいだろ?やり返せよ」
そうリーダー格のやつが言うと、背中にいた奴が手を放した。さすがに一発目の腹への拳が効いていて、膝をつく。
「・・やなこった。アンタらの考えくらい読めてんだよ」
きっと、俺に暴力を振らせて、レギュラー落ち、最悪退部とか狙ってるんだ。
「・・・ほんとにうぜえ奴っ」
言うと次は蹴り上げられた。
「っ!!!・・・・っゴホッゴホ、・・ぅ・・・っは」
「なあ、はやく、ほんとは弱いんだろ。だからやり返せないんだろ!」
「辞めますって言えばコレやめてやるぜ」
「ほら、はやく!!」
ギャハハ!!!と下品な笑い声をあげる相手に蹴られ、殴られ、叩かれ。痛みで涙が出てきた。泣きたいわけ、じゃないのに。
「っふ、ぅ・・・・かはっ・・はぁ・・は・・・・」
「こいつ、泣いてるぜ・・?アハハ、泣き虫」
「まだ、辞める気になんない?」
「・・誰が・・・やめる・・・か、よ」
「ふーん・・・・・・・じゃあ、腕折ってやる」
「!?な、に・・・!やめっ・・・!離せっ!!!!!」
「だから辞めるって言えばいいんだって」
ぐっと身体と、腕と、足と地面に押さえつけられ、見上げれば鉄パイプを振り上げるリーダー格のやつ。
「(怖い、こわい、こわい・・・・!だけど、)」
「最後にもう一回、辞める気、ないんだよな」
「・・・・ねえ、よ。」
「ふーん・・・これだけやられて泣いてんのに?馬鹿だね・・・・じゃあ、お望み通り潰してやる」
「くっそ・・・!!!!!」
もうだめだ、そう思い目をつぶった瞬間「うしろ・・!」と誰かの焦った声のあとに、バキ・・という音とカランカラン・・・っと鉄パイプが落ちる音。身体を押さえつける手がふっと離れたので、恐る恐る目を開けた。
「お前たち・・・・なにしてたの?」
「部内で暴力沙汰とは・・・たるんどる」
「・・・ぶちょ、ふくぶちょー・・・」
なんでいるんだ?この人たち帰ったじゃんか
「幸村、真田っ・・・!」
「何もしてないとは言わせないし、言ったとしても無駄だよ。このこと以外のこともすべて記録済み。ね、」
「おまんら、外部推薦狙っとったの。これあったら無理じゃな。どんまい」
「すべてこのカメラに収めてありますからね、ハイチーズ」
カシャっとフラッシュをたいて写真をまた撮った。そしてにやりと笑みを浮かべる。なんだあのダブルスコンビ。
「お前たちの処遇はこっちで決める。少しでも軽くしたいならさっさとここから消えろ」
相手の胸ぐらをつかみ、そう告げた柳先輩の顔はいつも以上に表情が冷たく、声も地を這うように低かった。なんだか俺がビビってしまった。言われた相手はひっ、と情けない声を上げて走り去った。
「大丈夫か?とりあえず座れぃ。ジャッカルー救急箱と保冷剤ー!」
「はいよ、ほれ。これ頬に当てとけ。」
そういってジャッカル先輩がタオルにくるんだ保冷剤を渡してくれて、丸井先輩が擦り傷のできている足に消毒液をかけてくれた。
「・・・・せんぱいたち、なんで・・・っ!」
「ああ、なぜここにいるかというと」
「ちがう!!!・・・今までのことも、記録済み・・て、さっき、言ってた・・・・じゃあなんで!止めてくんなかったんすか・・・っ!」
答えようとしてくれた副部長の言葉を遮り、大声で言う。手当をしてくれていた二人の手も払う。二人は驚いて固まっている。切れた口元に流れた涙が沁みて痛い。殴られて蹴られた腹部も痛い。そして心も痛い。
気にしていないとは言っても、小さな痛みは積み重なっていて、本当は辛かった。気づかれたら心配かけると思ったから先輩たちには見せないようにしていたけど。だけど知っていたなら・・・・
「すまない、赤也」
暴れかけている俺を止めるように、優しく抱きしめてくれたのは柳先輩。
「長く辛い思いをさせてすまなかった。さっき、今までのことも、と言ったのは・・・嘘なんだ。俺達は、お前がずっとそういう状況にいたなんて微塵も気づかなかった・・・本当にすまない。」
頭を撫でてくれている先輩の手は少し震えていた。
「俺たちがどうしてここに来れたかというと、たまたま柳生がレギュラーの部室から出てきたあいつらを見てね。」
「今日の朝練のあと、私は鍵当番で最後まで部室に残っていました。その時はきちんと閉められていなかった切原君のロッカーがキチンと閉まっていたので、失礼ながら覗かせていただきました。すると、例の紙があったわけです。」
「それで、さっさと帰ったフリをして、学校内で待機していた。どこに連れて行かれるかわからなかったからな。」
「じゃあ、もうちょっと早く・・・止めれたでしょ」
ハア、とため息とともに呆れた声が出る。俺、やられ損な気がしてきた。
「ああ、だがお前がどう出るかも見たかったのだ。・・・・・よくやり返さなかったな。」
そんな言葉とともに副部長が珍しく俺の頭をそっと、撫でてくれた。
「ちゃんとレギュラーの自覚があって安心したよ。これからも頑張れ、期待してる」
ポンっと部長も俺の肩に手を置いて言う。
「〜〜〜〜っ」
周りを囲む先輩たちも、うんうんとうなずいたり、にやにや笑ったり。そんな嬉しいことを言われて、また溢れてきた涙を止める術などなかった。
そしてずっと頭を撫でていてくれた柳先輩は、目を開き、じっと見つめてきた。いきなりのことにちょっと驚く。
「っな、なんすか・・?」
「これからこういうことがあれば、すぐに俺達に教えること。いいな」
目は余りに真剣で、そしてその瞳の中に見える悔しさと怒り。黙っててもこんな思いさせてしまうなら、言っちゃった方が楽だろう。被害もおそらく、格段に減ることになるだろう。もし、そういうことがあればの話だが。
「・・・はい」
「(ま、この先輩たちが出てきた時点でもういじめられることはないんだろうけど)」
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なんか、最後適当です、お気づきの通り。うまく締めれなかった・・・!
柳赤にしようかとも思ったけど、付き合ってて柳さんが赤也のいじめに気付かないわけがないということで、雰囲気的には柳→(←)赤くらいで
赤也はかわいそうなポジションにいると萌える。いじめられっこだの、同期に友達がいないだの、そういう感じ。