小説 | ナノ



今日は立海大附属中等部の体育大会だ。

俺は運動部、しかもあのテニス部ということで様々な競技に駆り出される。その中で俺が一番最初に出場するのが、借り物借り人競走だ。選抜理由は、「どんなモノでも人でも場所がわかりそうだから」

俺をなんだと思っているのだろうか。



続々と下級生が走っていき、ようやく俺たち3年の走順が回ってきた。

「よーい・・・・」パンっ

ピストルに合わせて、スタートを切り紙に書かれているお題を見る。正直この競技は足の速さなどほぼ無関係、どんな紙を引くかの運に掛かっているだろう。

俺が引いた紙に書かれていたお題は、


【部活の仲間を1人】


ぱっと周りを見渡す。ここは3年の座っている座席よりも2年寄りである。そうなればやはり、


(・・・赤也しかいないだろう)



「・・赤也!!!!どこにいる!!」

とにかく声を出して探すしかない。あの特徴的な髪を探せば・・・!!


「赤也!赤也はどこだ!?」

「柳せんぱーい!俺ここにいるっすよ〜」


声のした方を向くと、にへらっと笑いながら、椅子に座ったまま頭にタオルをかけて靴を履きなおしている赤也がいた。


「よかった・・・来い、お前が必要だ」

「え、あっちょ、靴履けてないっす・・・!」


そう言って結び直そうとする赤也を見るときにチラリと横目に入った、走っていくゼッケンをつけた選手。手に植木鉢を抱えているところをみると、お題の品を手に入れてあとはゴールを目指すだけのようだ。こうじっとしてはいられない。蝶々結びが苦手な不器用な後輩をチラリと見る。もたついている。例え、体育祭の競技だといっても俺はテニス部レギュラーである。ならば、




「・・・・負けはいけないな」

「あ、もうちょい・・ってわああ!先輩!!!なにしてんすか!!!!おろしっ」

「じっとしていろ、そしてしゃべるな。舌を噛むぞ」



赤也を姫抱きにしてゴールまで駆け抜ける。また筋肉がついたのか、少し重くなっているので走りにくいが大したことはない。だってここからゴールまでは30メートル程なのだから。







「1着!3-F!お題の確認しますねー。・・・テニス部2年レギュラーの切原くんですね、お題合格です 1着おめでとうございます!もう退場してもいいですよー」



2人で退場門に向かっている時、隣で真っ赤になっている赤也が声を上げた。

「先輩・・!!!なんでお姫様抱っこ・・・・!?」

「お前がとろいからだ」

「おんぶとかでもいいでしょーが!まじはずい・・っ」

「・・・普段は人前でできない恋人らしいこと、出来たじゃないか」

「!?!??!!? 〜〜っもう!ばかじゃねーすか!」

「なんとでも言えばいい。さ、早く行くぞ」

「〜っ・・はい!」




今度あいつらに会ったときにからかわれることは間違いないな。









「(抱っこされてるときに見た斜め下からの柳先輩の顔、かっこよすぎんだろ・・・っ!!!!心臓止まるかと思った・・・)」













お姫様抱っこな柳赤。

柳さんもみんなに見せつけたいんです。赤也大好きだもの。みんなに見せつける丁度いい機会が回ってきたと頭の中で瞬間的に計算したでしょうねー。2年の席が近かったから、赤也が紐を結ぶのが遅かったから、他に後輩はいなかったから、おんぶだと赤也が乗るまでに時間がかかるから、ほら、言い訳はたくさん!

勿論次の部活で2人してからかわれました。柳さんは涼しい顔、赤也はとにかく真っ赤。だってあの真剣にゴールを目指す柳さんの顔を思い出してしまうから!



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