小説 | ナノ



社会人柳赤









ふ、と意識が浮上して時計を見れば午前9時。少し寝すぎたかと思うも、昨夜の行為を思えば早いほうか。

隣でまだ寝息を立てるもじゃもじゃに布団を掛け直し、ベッドを出て、ぐっと伸びをする。


昨日、実家を離れて引っ越してきた。そのために押入れの片付けをしているとき自分宛の手紙を見つけた。封筒のそれはちょうど10年前、中学3年の頃に書いたもの。



リビングのソファに腰かけ封を開けると、今より少し汚い筆跡で書かれた手紙が出てきた。

"10年後の俺へ"―――そんな言葉からはじまっていた。




『10年後の俺へ、今は幸せだろうか。
それとも悲しみで泣いているのかだろうか。』



大変なこともあるが、幸せな生活だぞ。



『レギュラーの奴らとの付き合いはどうなっている?みんな変わらずやっているのか?それともバラバラになってしまっているのだろうか。そうなっていては・・・寂しい』



心配しなくともあいつらとは10年経った今でも仲がいい。精市と弦一郎、仁王、柳生、丸井、ジャッカル、それぞれが自分の道を歩いているが変わらない仲間だ。今日も引っ越し祝いという名目で集まる予定だ。



『出会いと別れを繰り返して「今の俺」よりも素敵な柳蓮二という人間になれているだろうか?』



素敵かどうかはわからないが、10年の中でまた新しい経験もたくさんしてきた。それを考えればやはりあの頃よりは随分と成長していると思う。



『いくら俺と言ってもこれから先、きっと成功だけじゃないだろう。挫折や悔しいことをたくさん味わっているだろう。そんなとき、気づかないうちに守られているんじゃないか?・・・・赤也に。今の俺がそうであるように、10年後もそうであればいいと思っている。』



ベッドですやすやと眠っている赤也の姿を思い浮かべ、ふふっと笑みがこぼれる。そうだな、今も変わらずあの子に助けられている。



『10年後の俺は誰を好きなのだろう。誰が隣に立っている?変わらずに赤也のことを好きでいるのだろうか?』



ああ、俺の隣には10年前から変わらず赤也がいて、その思いは消えてしまうどころか愛おしさが増している。



「何読んでるんすかあ?」


昨日の情事のせいでかすれ気味の声で、ソファを挟んだ背中側から首に抱きついてくるこの腕の持ち主が、俺は愛おしくてたまらない。


「おはよう、赤也。これは10年前の俺からの俺宛の手紙だ」

「へえ、そんなの書いてたんすね」

「10年前の俺は10年後もお前と一緒にいるかどうかを心配していたぞ」

「離れるわけないっす。俺、柳さんと一緒にいるのが1番安心して、好きですもん。あの頃からね。」


そういってすり寄ってくるところは、あの頃と全く変わらない。そしてその髪を俺が撫でるのも変わらない。



「そうか、それは俺もだな」

「へへーっ大好きっす!今日からまたよろしくね?」

「こちらこそよろしく。」



10年経っても変わらない大切なものに囲まれて過ごしている俺は、本当に幸せだ。




「そういえば、腰は大丈夫か?」

「・・・あんまり大丈夫じゃないんで、俺の分の片付けもやってください」

「そうか、久しぶりだとやはり手加減できないものだな」

「・・・・変態」



来年も、再来年も、また次の10年後もこうして変わらずいられたらいい。











letter song/初音ミク

聞いてて真っ先に柳さんが読んでいる膝の上でごろごろしている赤也が思い浮かんだなど。

柳赤は赤也が大学卒業したら同棲とかしちゃえばいいよ!このお話だと10年後・・・25歳と24歳か。働いてるんじゃねーの。半同棲からの認めてもらってほんとに一緒に住み始めたとかでいいか(適当

とにかく何歳になってもずっと一緒にいる柳赤であってほしいのです!


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