小説 | ナノ



「っ柳先輩・・・!!」



きっと彼はここ―――3-Fの教室にいる。だって前に、いつも赤也をここで待っているんだ、って言ってたから。

扉を力強く開けすぎて、大きな音が鳴ったが気にはしない。ここには柳先輩しかいないのだから。



「赤也・・?まだ部活中のはずじゃ」

「なんで最近、迎えに来てくれなかったの」


冷静になれ、なんて思ってみても意味がない。先輩の言葉を遮って言葉をぶつける。


「・・・ああ、生徒会に来てくれと言われてな」

「なんで連絡くれなかったの」

「それどころじゃなかったんだ」

「うそ!アンタ、外部受験するんだろ!?だからその見学行ってたんじゃねーのかよ!」

「・・・・誰から聞いたんだ」


その言葉は外部受験をすることを肯定したような返しだった。心のどこかで、先輩たちがからかっているだけなのだ、と思っていた赤也の期待を壊した。


「っ・・・・なんで!なんでなんだよ!」


柳が座っている机の前に立ち、じっと見下ろす。その目線があまりにも教えろというのでふ、と軽く息を吐いて話し始める。


「立海の高等部では、俺のレベルに合わない。もっと上に行きたいんだ。」

「じゃあテニスは!?やめちまうのかよ!」

「それは続けたいが・・どうなるかはわからないな」

「・・・・・俺との約束は?」

「・・・・・」

「高校行ってもダブルス組んで!俺も悪魔化しないで正々堂々勝負して!!また全国で勝つって約束したじゃねーかよ!!!!!!!!」


赤也にとっては大事な約束だったのだ。そのために感情をコントロールするんだ、と燃えていたといっても過言ではない。先輩にとっては大したことないことだったのだろうか、とだんだん赤也の表情は陰り、顔も俯いていく。座っている柳からは表情は丸わかりなのだが。


「泣くな、赤也・・・・」


そう言うと、柳は一瞬驚き、苦しそうな顔をし赤也の頬を伝い始めた涙を拭おうと手を伸ばした。が、それは叶わなかった。


「っさわんな・・・!」

パンッと赤也に払われてしまった。赤也も咄嗟の行動だったのか驚いているようだが、大きな瞳に涙をためたままギンっとにらみ、柳に言葉をぶつけた。


「・・・うそつき!」

「っ!」


息をのんだ柳に気付く余裕なんかは赤也にもうなかった。あふれ出てくる涙のせいで感情のコントロールがますます利かず、思うままに口から言葉が飛び出してくる。


「うそつきうそつきっ・・・!先輩なんか、もう・・・・・っ!・・・いいっす、さよなら」

「赤也!!!!」


赤也は教室を走って飛び出した。



『今、俺なんて言おうとした?』

赤也が勢いに任せて口走りそうになったのは本心とは真逆の"大嫌い"。



教室を飛び出したものの、行くところがない赤也は人通りの少ない部室棟の裏に来ていた。まだ部活はやっているだろうがこんな顔では戻れないし、部室も部活が終われば、人であふれるだろう。そこにしゃがみ込むと、蘇る苦しさ。


「くっそぉ・・・・!」



俺には止める資格なんてないんだ。だってただの甘えん坊の後輩で、手のかかるダブルスパートナー。付き合っているわけじゃない。泣いて、喚いたって、どうにもならない。変に思われたかな・・・

大嫌いと言えればどれだけ楽だったのだろう。


そう考えながら眠気に襲われ、眠ってしまった













第三者視点で書けるようになりたいこの頃。挑戦したものの撃沈

次は柳さん視点のお話になると思われます。

柳赤なのか赤柳なのかよくわからんラインのお話になってしまった・・・でも悠亜的には柳赤です。


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