小説 | ナノ



「俺の前で柳さんが笑ってるところ、付き合ってから見たことない気がするんすけど」


朝練終了後、いきなりもじゃ毛の恋人から言われた。


「そんなことはないと思うぞ」

「いやあるっす!柳さんが笑ってるところ見たいんで、笑ってください」


はい、笑って?ってそんな風に言われてもだな。


「・・・何も面白いことがないのに笑う奴がどこにいるんだ」

「それもそうっすよねー・・・うーん・・・あ!じゃあ今日、柳さんを笑わせてみせます!覚悟しててくださいね!」


そういうとお疲れっした―!と足早に部室を出ていく。なんだかゲームを仕掛けられた気分だ。あまり笑わないように我慢してみようか、と思いを巡らせ、今日1日は楽しく過ごすことになりそうだな、と小さく口元を緩めた。





赤也は宣言通り、1限終了後から休み時間になると3−Fの教室にやってきては、小さなギャグから、変顔、すべらない話などのたくさんのネタを披露していった。

どれもこれも、俺の周りにいる奴らには大きくウケていたようだが、当の俺は笑いのツボがどうやら常人とは違うようであまりウケなかった。

昼休み、なかなか満足のいく表情を見せない俺に赤也が痺れを切らし、ドンっと机に手をつき言ってきた。



「もー!柳さん笑ってよ!」

「笑っているじゃないか、周りが。」

「周りじゃなくて柳さんが!」

「じゃあもっと俺を楽しませてくれ」

「うー・・・」

予鈴が鳴ったので教室に帰るように促すと、しょぼんとした様子でとぼとぼと教室へ帰って行った。





5限終了後の休み時間には赤也が現れなかった。

6限が終わり、帰る用意をしているときに携帯のランプが光っていることに気付き、確認してみると赤也からのメールだった。





《終礼のあと、中庭の大きな木の下に来てください》






指定された場所へたどり着けば、その大木のもとで体育座りをして顔を伏せている赤也の姿。



「赤也」

「・・・・柳さん、おれ、もうどうしたらいいかわかんなくなっちゃった」

「諦めるか?」

「それは嫌っす!」

伏せていた顔を思いっきりあげて強い声を上げる

「でも、ほんとにどうしたら笑ってもらえるかわからなくて・・・俺じゃ柳さん笑わせてあげれないんすかね・・・・」



ぐっと手をひかれ赤也の胸に倒れこむ



「柳さん、俺ね、どんな柳さんも好きだけど、笑ってる顔が一番好きなんです。いつか見たあんたの笑顔にすっごい惹かれたんっすよ。・・・・好きっす、笑ってくださいよ・・・・大好きっすー・・・」


俺の頭に頬をぐりぐりと寄せながら、好きだ、笑って、などと言っていたが、俺が何も言わないでいると、だんだんその声も小さくなっていき、すると次は、俺のこと好きじゃないっすか、幸せになれないっすか、笑えないっすか、という言葉が涙声で聞こえてきたのだ。

そうなるとだんだんかわいそうになってきたのと、こんなにも俺のことを思ってくれている赤也のことがとても愛おしく思えてきたのと、とんでもない勘違いに面白さがこみ上げてきたのとで、思わず吹き出してしまった。


「!!??やなぎさっ、いま・・・!」

まじまじと顔を見つめられる

眼が少し赤い。そっと目元に手を寄せながらやさしく言ってやる。

「ふふ、・・・ほんとにお前はバカだな」

「はっ!?なにそれひどいっすよ!」

「あまり表情には出ていなくとも、赤也といるだけで十分俺は幸せだと思っているし、楽しませてもらっているぞ?」

「わかりにくいっすよ・・・・」

「それでもお前はわかってくれるだろう?」

「っすけど・・・たまには見せてくれないと俺だって不安になるんすからね!」

むぅっとすねたような表情の中に、少しの寂しさが見え隠れしている。そんな寂しさは取り除いてやりたい。・・・だって俺は、赤也が思う以上に赤也のことが好きだから。


「俺は今、とても幸せだと思っている。」

「ほんとに・・・?」

「―――お前が思う以上に俺はお前のことが好きだぞ」

「!!!!」

「そして今、してほしいことがある。・・・わかるか?」

「・・・もちろんっす!」

赤也の表情がぱっと明るくなり、俺の頬に手を添え優しいキスをしてくれた。そのあと、ぎゅうっと抱きしめられ、また好きだ好きだといい始めた。


こうしているときに笑っているからお前には見えないんだ、とは言わないでおく。








補足
思ってること外にあまり出さない柳さん
というか出せない柳さん
ちょっと計算高めの柳さん
柳さん好きすぎていっぱいいっぱいな赤也君
そんな二人でお送りしました。

ツイッターお題
「大切な人に」
「木の下で」
「笑いながら」
「バカ」という柳さん

即赤柳!と思いましたがなかなかネタが舞い降りてこず。
今朝の夢で赤也が柳さんに「笑顔届けます!」とかいってたんで届けてもらいました。

がしかし!

赤柳になっているんだろうか\(^o^)/
ちょっと柳さんのほうが上手な感じの、付き合いたての赤柳といったところでしょうか・・・
しかも最後がどうしてもシリアスというか切ない感じになりそうやったからどうしようかと悩んだ末のこの締め\(^o^)/なにこれ

RTしてくださった方ありがとうございました!
そして報告させていただきましたがこんなのになっちゃいましたorz

もしも読んでくださったのならありがとうございました!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -