小説 | ナノ



「卒業 おめでとッス」
「ああ、ありがとう」

ふんわり笑う、柳さん

「俺、絶対もっと強くなりますから。
高校行ったら、また試合してくださいね
その時には勝ちますから」
「ふっ 楽しみにしている」

今日はよく笑うなあ、なんて思っていると
不意に名前を呼ばれた

「・・・赤也」

え、と返事する間もなく
自分の首に巻いていたマフラーを
俺の首に巻きつけた上に
ブレザーまでも俺の肩に掛けた
・・ちょっと大きいのが悔しい

「え、え、ちょっと!寒くないんスか!?」
「大丈夫だ。・・そのブレザーはもうすぐ
お前に合わなくなるだろう?
よかったら、使ってくれ」
「え、でも、」
「いらなければ捨ててくれて構わない」
「・・・・」
「それじゃあ、そろそろ行くぞ
またな、赤也」

俯く俺の頭をそっと撫でて去って行った

「なんで...こんなことするんスか・・・!」

今日で全部忘れようと思ってたのに。
最後にしようと思ってたのに。

ブレザーを肩から下ろし
顔を近づけると、ほんのり残る柳さんの匂い
首に巻かれたマフラーからだって。

いつもふざけて抱きついていたときを
思い出させるこの感覚

「.....無理、ッスよ・・・!」

好きです、大好きです


今溢れる涙と同じくらいに
好きが溢れて止まらない


卒業おめでとうございます
純粋な気持ちで先輩として見れなくて
ごめんなさい












「あれ、ブレザーとマフラーは?」
「ああ...赤也にやったんだ」
「へえ・・・ふふっ酷な事するね」
「?そうか・・・?」


一年という月日の間に
ずっと隣にいたのは俺だと、忘れて欲しくない

あいつの中に、
俺の存在が強く残りますように

そんな想いとともに
絶対に届くはずのない気持ちを込めて。


ただの後輩として、みれなくてすまない








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