ノラ猫の甘やかし方 | ナノ
attractive
「は?じゃない。いいか?もう一度言ってやる。赤井秀一、僕の物に"も"なれ。」
「それは、どういった意味かな?……君は男、だろう?」

なるほど、赤井がナゼそんなにも嫌そうな顔をしたのかが分かった。

「あぁ、恋愛対象として捉えてしまったの?まぁそれでもいいケド。僕は君の頭脳、身体能力、容姿、知識……調べれば調べるほど気に入っちゃってね。だから僕の助手になれよ、って言いたかったんだよね。もうそろそろFBIにも1人助手が欲しかったし。その面でお前は最高。」

赤井がやけに納得した顔でこっちを見てきた。

「なるほど、そういう話か。だがわざわざ俺に頼むよりFBIと協定を結べばいいだろう?そしたら君の犯罪履歴は消え、情報は手に入る。……俺個人と結ぶよりはいいんじゃないか?」

わかってないなぁ。

「そういうのは制約がかかるもんさ。僕に渡していい情報かいちいち吟味され、時によっては本当に使えないもんだったりする。でも、お前と個人で結べばそうはなりにくい。それに、もう犯罪履歴に関してはツテがあってね!」

"僕"の得意なにっこり笑顔。
街でナンパをしたら確実に何人か引っかかってくれると思う。そんな笑顔。

「君はFBIだ。極秘で僕の為に幾つかの仕事を請け負って欲しい。そのFBIの力を使ってね。」
「嫌だ。………と言ったら?」
「どうかな?君はそうは言わないと思うけど?」

私が自信ありげに言うと、赤井秀一が突然ガクンッと体を大きく揺らし、手を地面につけて辛そうにしている。
「インキュバス様。」

ボディーガードから立派な生地をした白い手袋を受け取る。
その手袋を手に装着しながら赤井秀一に近づく。
万が一自分が赤井秀一の何かに触れ、指紋残さないために。
奴は麻酔針であまり自由に身動きができないはずだけど、念には念を入れないと。この男を甘く見てはダメだ。

「おい。頼むからまだ寝てくれるなよ?まだ返事を聞いていない。隈が凄いし、思ったより強く効いちゃってるみたいだしさ。」

片膝をついて必死に睡魔と闘う赤井の目の前に一定の距離を置いてしゃがんだ。

「なぁ、赤井…」

だが、動かないと思っていたはずの彼が思いっきり私に手を伸ばし、強く引きつけられた。

「うっ……おわっ?!」
「…!インキュバス様!…赤井お前ッ」

警戒はしていたものの突然のことに驚き、引き寄せられた瞬間は驚いて目を閉じてしまったが、動作が落ち着き目を開けると目の前に赤井がいた。
どうやら、地面に押し倒されたらしい。

またそんな気力が残っていたのか。
ハハッ…お見事。

私は急いでボディーガードに「止まれ」の合図を送る。
するとそれを理解した彼はしぶしぶ命令に従った。
従順な犬で助かる。

「……なんだ?赤井。僕は青姦の性癖はないんだけど?そんなに僕とシたいの?ふふっ。」

両腕を強く地面に押しつけられる。
この状況に少し興奮してか、押し付けられた腕からは痛みを感じない。

「じっと……してろ、」

睡魔と闘う赤井の顔はどこか官能的だった。
まるで快楽に耐えるような…そんな顔。

赤井は片手で私のサングラスをゆっくりと取る。そして、再び、何も隔たりのない状態で私たちは、
そう。熱く、目を合わせた。
この瞬間はとても長いようで短い時間。私の顔を見た赤井の目は見開いたようにも見えた。

「…どうした?意外と美男子だったこの顔に見惚れでもしたか?」

くすくすと笑ながら少しからかってみる。

「……まぁな。」

赤井の勝ち誇った顔が目に入った。
あっそ。
僕が僕の顔がいいことなんて理解してる。お前に言われてもキュンともしないよ。
私は解放された片腕と片脚を上手く使って今度は私が上になる。
あまり力が入らない身体にそうするのはさほど難しいことじゃない。

見下ろすこの感じ。ああ。こっちの方がなかなかいいじゃん。

地面に肘をつき、赤井に覆いかぶさってもたれかかった。

「早く答えを言え。赤井秀一。お前はもう眠る。時間が無いんだ。」
「………俺を信用するのか?」
「人脈っていうのは作っておくものさ。」
「では、俺に何の利益がある?」
「僕がもらう予定の報酬の3割を与えよう。なかなか高いんだぜ?それにオマケでお前達の追ってる黒ずくめの組織の情報を与えてあげようじゃないか。」
「5割だ。」
「3.5」
「計算が面倒くさくなる。」

確かに。
言われてそう思った。

「……4割。」

赤井の目つきが少し鋭くなった。
私も笑う。
赤井はこの話に乗った。

ここまでくれば流石に断りはしないだろう。

「君と手を組もう。」

ほら。
"僕"に落ちた。
今日はもう赤井には用はない。

なら、もう眠れ。
そう耳元に囁き、額に優しくキスを落とした。すると赤井は耐えられなくなったのだろう。
最後に私をほんの少し睨みつけながらコテン…と赤子の様に寝てしまった。
私は赤井の上をそっとどき、ボディーガードと共に先を急ぐ。

数メートル先にもともと用意していた、黒色の一般車の後ろ座席に乗り込み、ボディーガードは車を発車させた。

「菜々様、上手くいってよかったですね。」
「まー、どーかな?彼のことは舐めてかかったらこっちが負けてしまうし。次の策を早いとこ見つけないと。そうだな、恋にでも落とすか?ふふっ。楽しそう。」

そんな呟き対応するようにシナリオを頭の中で生み出していく。

そして静かに車は闇夜の暗闇に溶け込んでいった。

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