短編 | ナノ

★Happy Halloween


少し角張った長い指、大きな手の甲、まさに女性とは違った男性の手

あの手で頭を撫でられたり、顔に触れられたり、身体の至る所に這わせられたり………

でも、

彼は今、私より大事な大事な"恋人"さんの事を触っている。
…そうつまり煙草のことだ。

思えば私はずっとその"有機物"にヤキモチを焼いていたに違いない。
だからこんなことを言ってしまったんだろう。

「赤井さん。煙草やめませんか?」

ーーーーーー

私はベットの上に寝転がり、赤井さんは煙草を吸うために箱を持って立ち上がっていた。

そして箱からタバコを1本取り出し火をつけ、その官能的な唇に咥えた。

激しいセックスをした後で、いまだ赤井さんのものが下半身に残ってるような感触が残っている。そう例えるなら身体の奥までひっかきまわされたような甘いだるさだ。

そして彼も射精あとの気だるさを纏いながら、煙草を手にしていたそんな時だった。

「赤井さんが煙草を吸った日はペナルティでその日は私に触れることは禁止です。」

赤井さんはいきなりのその提案に一瞬目を見開いて呆然としていた。

「……ダメだ。」
「なんで?嫌なら吸わなきゃいいじゃないですか」
「いや、あのな菜々?そんな簡単な問題じゃないんだ。いいか?俺は君が近くに居るだけで触れないと気が済まない。キスもしたいし、正直、また君を抱きたいくらいだ。いいか?もう一度言おう。100%俺には無理だ。」
「………それ以上は言わなくていいです。」

そこまで熱弁されると、コッチの方が照れるんですけど。

「まぁ、お試しで一週間やってみましょうか。モノは試しです。」
「おい!ちょっと待て。俺に拒否権は…」
「無いです。FBIのエースたるもの煙草の禁煙が出来なくてどうします?お酒は今まで通りでいいですから煙草だけですよ?」
「あのなそれ全くもってエース関係ないぞ。それに、これでもエースは務まってる。」

なんか必死だなぁ赤井さん。でも、

「明日から一緒に頑張りましょうね!」
「…は!?菜々本当にする気か?!」
「え?そうですけど?」

すると赤井さんは珍しく少し焦りを見せ、小さく溜息をついた。

「ならせめて君をもっと抱いてからにしてくれ。………恐らく、俺は守れない。触れれる時に触れとかないと。」
「え?」

どこからその発想が?

「さっきいっぱいヤりました!」
「これから禁煙生活を頑張るハメになるかもしれないんだ。あれじゃ………足りない。」
「足りない?!……って、ちょっ、ドコ触ってるんですか!」
「明日からだからな。………菜々愛してる。」
「ちょっと待っ……あ…はぁ…ん……!」

と言いつつ始まった赤井さんの禁煙生活。………から5日目。

「ねぇ、菜々シュウすごく朝から機嫌が悪そうなんだけど。」
「あー。実は5日前から赤井さん禁煙しているんだけど、最近の3日間失敗しちゃってるんだよね。」
「禁煙?!あのシュウが!?………ってしかも初めの2日間は成功してるの!?……ありえないわ。」
「…ジョディ、それしっかり聞こえているからな。……まぁ、俺は昼でも買ってくるか…」
「あ、赤井さん、」
「案ずるな。煙草は家だし、買わない。」

そう言って赤井さんはルームを出て行ってしまった。

「いや、そうじゃなくって……昼ごはん買いに行くの気をつけてって言いたかっただけなのに、」
「菜々も大変ね。シュウの体調を考えてあげたからこんなことにしてるんでしょう?でも、シュウはもっと大変そうね。」

なんか、ジョディがそんな事いうと、流石に良心が痛むな。

「いや、…………煙草にね、嫉妬しただけだから。」
「成る程、嫉妬から始まったのね!菜々それ面白くて最高よ!でも、………幸運にも今日はハロウィンだし、そろそろご褒美でもあげたら?」
「……ご褒美、ね。」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー

仕事が終わった後にジョディと一緒に"ある店"に寄り……そして戦利品を手に入れ、店から家まで着て帰ることにした。

その戦利品とは……白雪姫のコスプレ服だ。
でも、ただの白雪姫じゃない。
上の青色の服は肩が剥き出しで、少し胸の谷間も見えちゃってる。そして下の黄色いスカートはパンツが見えるか見えないかのギリギリの長さで、頭のリボンとヒールはお揃いの赤色という、…………エロ白雪姫だ。

「……なんかジョディとノリで買っちゃたけど、赤井さん喜ぶかな?」

ちなみにジョディはバンパイアの衣装を買ってたな……としみじみ思いながら帰路を急いだ。

ーーーーーー

あ、部屋の明かりが点いている。赤井さんもう帰ってたんだ、

「…ただいまぁー。」

部屋に入った瞬間私は、

「「あ、」」

タバコを片手にくつろいでいる赤井さんを発見した。

「菜々!いや、これは…」
「赤井さん……」

なんか浮気がバレた男性みたいな感じになってるけど、

「悪かった、今日も……我慢、するよ……」

そんな仔犬みたいな目。
ずるい。

その身体に向かって私は抱きついた。

「おいっ、ちょっ……触りたくなるから離れてくれ。しかも、その格好は……ヤバイ。」
「んっーと、ごめんね。赤井さん。なんか禁煙どうでもよくなっちゃった。いや、体調的にはどうでもよくないんだけど、本当はただ、………煙草に嫉妬してただけなんだよね。」
「は?」

私の言っている事があまり理解できていないみたいなので、行動で理解してもらおう。

「赤井さん…っん、…っふぁつ。…んっ、ちゅっ」

凄く驚いたような顔をしているが、
私の言わんとしてる事を理解してくれたようだ。

「ふっ、俺は嬉しいが、誓約を作った君から触れているがいいのかな?」
「……むー。いいの。もういい。最近ずっと赤井さんに触れられなくてもう赤井さん欠乏症だもん。
足んない。赤井さんが足りないの。」
「あのな、菜々それ以上言ったら歯止めが…」
「 …Trick or Treat。赤井さんを頂戴。ねぇ……早く満たしてよ。」
「……それならば仰せのままに菜々姫。」

私が唇をじっと見ている気づき赤井さんの口の片端がまた上がった。身を乗り出し、柔らかな唇を私の唇に押し付ける。甘く無邪気な感じで始まったキスだったけど、赤井さんの唇が開いた途端、私は舌で彼の舌を愛撫した。

「んぅ…ふぁ、はぁっん……」
「……逃げんな。」
「…はぁ、ん………くるしっ……」

ぴくんと跳ね、反応を示す身体に満足して、また唇を挟む。何度も態勢を変え、唇の合わせ方を変え、長い間続くキス。

今度は音を立てて唇以外にもキスをしていく。菜々もその唇の感触に自然と声が漏れ、2人の密着度合いが高くなる。

そしてゆったりと互いの下側になっている手の指を絡め、赤井さんは空いている手で私の頬を撫でてきた。
その興奮からか、赤井さんは鼻から深く息を吸い込んで私の体に体を押し付けてくる。

「……ん、赤井さん、……その、めっちゃ当たってるんだけど、」
「……分かってるから言うな。」

銀の糸が名残惜しそうに私たち2人をつないでいる。

「菜々、……俺はもう禁煙しなくていいのか?」
「ふっ。……赤井さんどうせ守れないんでしょ?それに本数が減った分、お酒の量何気に増えてたし。もう分かったのよ。でも程々にしてよね!………それに、悔しいけど、煙草吸う赤井さん無駄にカッコいいから好きだし。」
「ああ…!程々にしよう。だが…」
「ん?」
「菜々………まさか店からその格好で帰ってきたのか?」
「え?そうですけど?」
「………仕置だな。」

そう言って彼は私を持ち上げた…もちろんお姫様様抱っこで。

「な!ちょっと赤井さん!下ろしてよ!」
「無理な相談だな。俺は床よりベッド派なんでな。」

そう言って私はベッドの上に降ろされた。
向かい合わせにされ、キスの合間に胸を服の上からやわやわと揉まれたり、太ももを撫でられたりされるが…、

「…ねぇ、服、脱がさないの?」
「あぁ。今日はせっかくのハロウィンだし、お前もそれなかなか似合っているんでね。脱がせるのは勿体無いからこのままがいい。」
「え、ちょっ……なんか赤井さん手つきエロい!」

そしてその夜は、結局私の方がノリノリで赤井さんに色々と奉仕をした。
思い出すとマトモに赤井さんの顔を見れないほど恥ずかしいが、ハロウィンのいい思い出となったのはよしとしよう。


赤井さん……Happy Halloweenですね。
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