Zero | ナノ

答えは媚薬

ガタンッーーーー

大きな音が響き、降谷の思考が中断された。
音は玄関近くからした。
そこで一つの仮説が浮かび上がる。まさか先程彼女を追いかけ回していた組織の人間がこのホテルにまで辿り着いてしまったのではないかと。

だとしたら、俺が彼女を守る。

「よし、」

俺は素早く腰に手を当て、銃があるのを確認しつつ玄関へ急いだ。

だが、リビングの方から角を1つ回った先に見えた玄関には俺が予想した敵とは全く違い、
先ほど助けた女 ー菜々ー がいた。

「何、してるんだ?」

体を少し折り曲げ、壁に手をついて苦しそうな…何かから堪えるような…そんな姿。
さっきまで元気だったはずだと思うが、
その悪そうな体調で何処へと行くつもりなのか?

音の正体が菜々だとわかり、わざと音を立て、彼女の名前を呼びながら彼女の方へ近づき、菜々の目線に合わせるように少ししゃがんだ。

「あぁ。先程の音は菜々さんでしたか。それよりこんな時間にそんな体調でどこかへ行くなんてダメですよ。歩けないなら僕がベッドまでお連れしますから。」
「少し出掛けてくるわ。1時間ほどで戻るのでご心配なく。」

僕が彼女を抱きかかえようとすると、手で制される。
こちらを向いて要件を伝える顔は薄っすらと赤らんでおり、髪のセットが少し崩れていて思ってはいけないが、どこかその妖艶な雰囲気がエロいと思った。

「そんな顔してもダメです。そんな姿で一体どこに行こうとしてるんですか。ちゃんと休まないと。何処にも行かせませんよ。その怪我の手当てもまだなのに、無理に行こうとするならベッドに縛り付けます。」

俺は腰に手を当てため息をつく。
壁に倒れるほどの身体で一体どこに行くつもりなのか僕には全く見当がつかなかった。
ただただその行動に驚き、彼女を引き止めなくてはとしか思いつけなかった。

「手当ては1時間後にしてもらうから、お願いだからほっといて。」
「そんなわけにはいきません。さあ部屋に戻って。」
「ちょっ、今触らないで、……っあ、ん、」

俺が倒れそうな彼女を支えようと彼女の腰に手を当てた瞬間、彼女からとびきりの甘い声が飛び出た。

「菜々、さん?」

少しびっくりして彼女の顔を覗き込む。
すると、菜々さんは自分の声に驚いたような顔をしつつ、真っ赤な顔をしていた。
口を堅く結んで、怒っているような照れているような…判断の難しい顔。
その予想外の展開に俺もその顔に魅入ってしまった。


*****


ヤバイ。マジでヤバイ。

金髪君に連れてこられた部屋にきて数分、問題がおきた。
あんのクソハイエナ野郎。ぜってぇ飲ませやがったのクロロホルムじゃない。
眠気こねぇし!逆に目覚めが良くなった。

「はぁ。こりゃ媚薬じゃん、」

しかも遅効性だからか?効き目がなんか強い気がする。
いや、クスリの知識なんてよく知らないけど、確実にいつもの何倍もムラッとする。
子宮がめちゃくちゃキュンキュンしてる。

ホントはクロロホルムを盛られたとして、まぁ、寝て、明日金髪君に怪我の手当てとかして貰ってオサラバしようとか予定立ててたけど、狂った。完全に狂った。

だめだ。性欲が止まらないどころか、なんかどんどん漲ってくる。

急いでスマホをネットに繋ぎ、この近くの専門の店を探す。もし無かったらどっかで引っ掛けて適当にラブホにでも行くしかない。
本気で探したからか直ぐに目的の店を見つけ、行く用意をする。

「金髪君にはバレないように、だな。」

ドアをひっそりと開け玄関へと向かった。
金髪君が近くにいない事をいいことに玄関まできたが、1番大事な場面で事件は起きた。

「……う、っん。」

一層熱く、強く疼き始めたカラダに力を一瞬失い、頭を抑えた。

ガタンッーーーー

壁へともたれ掛かったつもりだったが、運悪く近くの下足置き場にぶつかり、予想以上にその音が大きくなってしまったのだ。

「くそ、ミスった。」

ああ。折角金髪君にバレないようにしたのに、台無しだ。
予想通り金髪君が私の名前を呼びながら駆けてきた。
これでも私プロの泥棒なんだけど。媚薬のせいとは言え、ちょっと自信なくすわ。

「菜々さん!?え、大丈夫ですか?」

目線を合わされ、私の状態を判断し始めた。
その反面、私は彼が意外と筋肉のある男らしい身体つきだと分かり、無意識に彼の目を見つめていた。

あー。………抱かれたい。

いやいや、しっかりしろ、性欲に負けんな。

自分の影に隠している部分を彼に教えるのは嫌だ。と思って、わざわざ店を探したのは自分だろ。

めんどくさい。自分の感情がこれほど面倒くさく感じることすら面倒くさい。

「あぁ。先程の音は菜々さんでしたか。それより、こんな時間にそんな体調でどこかへ行くなんてダメですよ。歩けないなら僕がベッドまでお連れしますから。」

手が私の腰へ向かうのが分かった。
恐らく私を抱き抱えてベッドまで連れて行こうとしてくれているのだろう。

「少し出掛けてくるわ。1時間ほどで戻るのでご心配なく。」

それを手で制して体制を整えた。
あまり触ろうとすな。理性が負ける。

だが、それで静かになる男ではなく、なんかごちゃごちゃ言われた。

……うるせぇ。

あーもう。いいって言ってんだろ。
コッチは早くこの性欲を処理したいんだよ。

「手当ては1時間後にしてもらうから、お願いだからほって。」

テキトーに言葉を言い放つ。

もう出かけてしまえばこちらのもんだ。

「そんなわけにはいきません。さあ部屋に戻って。」
「ちょっ、今触らないで、……っあ、ん、」

無視して歩き出そうとすると、金髪君の手が私のお尻と足の付け根の微妙なところを触り、
私はただ服の上から触られたのに、凄い感じてしまった。

それがなんか、ムダに恥ずかしかった。

感じてしまったのはそうだが、金髪君に甘い声を聞かれたのがとんでもなく恥ずかしかった。

勿論、色んな男とは経験はある。
だが、恥ずかしかったのだ。

「菜々、さん?」

うっさいわ。私の名前をそんなびっくりした声で呼ぶな。
羞恥を隠す思いで彼を睨み付ける。

なぜか会って離れない目の焦点に数秒。
休止符を打ったのは金髪君だった。

「うっわ!」

身体がふわっと浮いた。
金髪君に持ち上げられたのだ。

ちょっ、え?え?

マジやめろって思う気持ちで目の前にある鎖骨らへんを押すが、落とされたく無いとも思うし、これはこれで役得だと思う自分がいた。

じっとしてて下さい。そう耳の近くで囁かれた言葉は私を更に興奮させた。
連れていかれたのはシングルベッド。
ポスンとゆっくり降ろされ、休んで下さい。と言わた。
去ろうとした金髪君の後ろ姿を見て、一言思う。
負けた。負けた。性欲に負けた。

金髪君の服の袖をキュッと掴み、狙った上目遣いで可愛くおねだりする。

「抱いて欲しいの。………零くん?」

ここまできたらもう逃がせないから。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -