名前は?
「…っは。…ん、んっ、」
腰に手が回り。頭を支えられる。
時折漏れるお互いの吐息に、酸素を取り入れる為に少し唇を離すと2人を繋げる銀色の糸。
情熱的で、恋人同士がするような激しく、求め合うようなキスをしているのに、やっぱり私はどこか計算高くて、
出来るだけ物陰に隠れ、自慢の腰まで長さのある鳶色の髪の毛で顔を巧妙に隠す。
そして、意識は唇だけじゃなくて
後ろや横だったり、本当に敵から身を隠す事しか考えてないのだ。
暫くして、殺気の入り混じった気配が無くなったので、目の前の男の唇をゆっくりと離し、さりげなく周りを確認する。
「………ハイエナ共はもう行きましたか?」
「ッ!!」
バッと彼に目を向ける
「 そりゃ分かりますよ。走ってきた女性の腕には刃物の様な切り傷があり、そしてその女性を追うように殺気を撒き散らしながら追いかけてきた数人の男たち。……貴女、誰かに追われてますよね? 」
へぇ。温室育ちのどっかのボンボンかと思ったけど、コイツ案外鋭いんだ。
「 ええ、その通りよ。…ならわかるでしょ?私といたら危険なの。突然キスしてごめんね。でも協力ありがと。」
彼に背を向け、片手でさよならを告げつつその場を離れるため走り去ろうとしたが、
腕を強く掴まれ、逆に彼の身体の方へ強く引き戻されてしまった。
うおっ、
彼の規格外の行動に慌てて両手を彼の胸板に置き、対応しようとしたが、顔を少し上にあげれば金髪イケメン君の顔がほんの数センチの距離にあった。
実際に互いの鼻がもうスレスレの位置にあり、何かの魔力が働いているかのようにこのサファイアのような美しい瞳から目が離せない。
「待って下さい。まだ行かせません。まず貴方の傷を手当てしなくては。」
「意外としつこいわね、貴方。適当に女と遊ぶにしては危険過ぎるって分からない?対価がデカすぎるわ。私に構わない方がいい。」
「いやです。危険も承知で貴女の助けになりたいんです。」
真剣な眼差しが今の私には少しこそばゆい感じがした。
私だけに向けられたこの想いが。
「私に構う理由は何?あぁ。そっか、貴方見返りが欲しいのね。」
どいつもこいつもどうせ最終的にはそれだ。
金?身体?菜々の瞼に深い哀愁がこもる。
「違います。純粋に貴方を心配してるんです。貴女に危害は加えません。約束します。」
「………」
言葉の後の無言の圧力が凄まじかった。
知らないわよ。
なんかあっても、私のせいじゃない。知ったこったねぇ。そん時は自分でなんとかしなさいよ。
私に助けなんか求めないでよね。
そう心の中でぐちぐちと念じることでこのこそばゆい温かさに対応し、再び握られた手を今度は解こうとはしなかった。
「わがまま。別に、そこまで言うなら手当てされてあげてもいいけど。」
「では、僕の泊まっているホテルに行きましょう。」
コイツの笑顔が何故だか分からないが私の心にじんわりと染み込んだ気がした。
「見返りを求めないなんて、……あり得ない。」
小さく呟いた声が割と響いてしまい、金髪君に聞こえてしまったようだ。
「心配。ってだけじゃダメですか?」
「貴方って…」
バカねぇ、という言葉を急いで飲み込む。
あぶねぇ、あぶねぇ。本性はわざわざバラす気ねぇし。
「はい?」
「いや、なんだか不思議だなって思って。貴方みたいな人と出会ったのはこれが初めてよ。」
「これが普通です。」
普通……ねぇ、
「貴方、名前は?」
普段なら自分から知ろうとは思わないのに、何故か妙に気になってしまった。
名前なんて金髪君でも別に大したことじゃねぇのに。
「降谷零です。教えた代わりって言ったらなんですが、僕も貴方の名前を伺ってもいいですか?」
「神崎菜々よ。」
"素直"に本当の名前を教えるのも久しぶりだった。
腰に手が回り。頭を支えられる。
時折漏れるお互いの吐息に、酸素を取り入れる為に少し唇を離すと2人を繋げる銀色の糸。
情熱的で、恋人同士がするような激しく、求め合うようなキスをしているのに、やっぱり私はどこか計算高くて、
出来るだけ物陰に隠れ、自慢の腰まで長さのある鳶色の髪の毛で顔を巧妙に隠す。
そして、意識は唇だけじゃなくて
後ろや横だったり、本当に敵から身を隠す事しか考えてないのだ。
暫くして、殺気の入り混じった気配が無くなったので、目の前の男の唇をゆっくりと離し、さりげなく周りを確認する。
「………ハイエナ共はもう行きましたか?」
「ッ!!」
バッと彼に目を向ける
「 そりゃ分かりますよ。走ってきた女性の腕には刃物の様な切り傷があり、そしてその女性を追うように殺気を撒き散らしながら追いかけてきた数人の男たち。……貴女、誰かに追われてますよね? 」
へぇ。温室育ちのどっかのボンボンかと思ったけど、コイツ案外鋭いんだ。
「 ええ、その通りよ。…ならわかるでしょ?私といたら危険なの。突然キスしてごめんね。でも協力ありがと。」
彼に背を向け、片手でさよならを告げつつその場を離れるため走り去ろうとしたが、
腕を強く掴まれ、逆に彼の身体の方へ強く引き戻されてしまった。
うおっ、
彼の規格外の行動に慌てて両手を彼の胸板に置き、対応しようとしたが、顔を少し上にあげれば金髪イケメン君の顔がほんの数センチの距離にあった。
実際に互いの鼻がもうスレスレの位置にあり、何かの魔力が働いているかのようにこのサファイアのような美しい瞳から目が離せない。
「待って下さい。まだ行かせません。まず貴方の傷を手当てしなくては。」
「意外としつこいわね、貴方。適当に女と遊ぶにしては危険過ぎるって分からない?対価がデカすぎるわ。私に構わない方がいい。」
「いやです。危険も承知で貴女の助けになりたいんです。」
真剣な眼差しが今の私には少しこそばゆい感じがした。
私だけに向けられたこの想いが。
「私に構う理由は何?あぁ。そっか、貴方見返りが欲しいのね。」
どいつもこいつもどうせ最終的にはそれだ。
金?身体?菜々の瞼に深い哀愁がこもる。
「違います。純粋に貴方を心配してるんです。貴女に危害は加えません。約束します。」
「………」
言葉の後の無言の圧力が凄まじかった。
知らないわよ。
なんかあっても、私のせいじゃない。知ったこったねぇ。そん時は自分でなんとかしなさいよ。
私に助けなんか求めないでよね。
そう心の中でぐちぐちと念じることでこのこそばゆい温かさに対応し、再び握られた手を今度は解こうとはしなかった。
「わがまま。別に、そこまで言うなら手当てされてあげてもいいけど。」
「では、僕の泊まっているホテルに行きましょう。」
コイツの笑顔が何故だか分からないが私の心にじんわりと染み込んだ気がした。
「見返りを求めないなんて、……あり得ない。」
小さく呟いた声が割と響いてしまい、金髪君に聞こえてしまったようだ。
「心配。ってだけじゃダメですか?」
「貴方って…」
バカねぇ、という言葉を急いで飲み込む。
あぶねぇ、あぶねぇ。本性はわざわざバラす気ねぇし。
「はい?」
「いや、なんだか不思議だなって思って。貴方みたいな人と出会ったのはこれが初めてよ。」
「これが普通です。」
普通……ねぇ、
「貴方、名前は?」
普段なら自分から知ろうとは思わないのに、何故か妙に気になってしまった。
名前なんて金髪君でも別に大したことじゃねぇのに。
「降谷零です。教えた代わりって言ったらなんですが、僕も貴方の名前を伺ってもいいですか?」
「神崎菜々よ。」
"素直"に本当の名前を教えるのも久しぶりだった。