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出会い

避けきれずに両腕を掴まれてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
脚でなんとか抜け出そうと暴れ、試みるが相手もプロだ。そう簡単には抜けられない。

一瞬の気を緩んでしまった時、もう1人の仲間が後ろから何かの薬品を染み込ませた布を私の鼻周りに押し付けてきた。こちらもそれを吸わないように息を止め、対処しようとしたが、
右側で私の腕を掴んでいたやつを足払いにした時、その反動で、思いっきり薬品を嗅いでしまった。

クッソ……!こっちが女1人だと調子に乗りやがってコイツら。
頼む、せめてクロロホルムであってくれ。

どちらにせよ、嗅いでしまった薬品の効果がいつ出るのか分からない以上、ここに長居は禁物だ。
どうする?と焦りを感じつつ考えていた時スペイン語で男性特有の力強いバリトンボイスが響き渡った。

「Hola! Entonces, qué estás haciendo ! (おい!そこで何をしている!) 」

祭りの為に見回りをしていた警官だった!!
助かった!今だ!

警察の声に敵が足を止めた隙に私は走り出した。
大丈夫。逃げるのは苦手じゃない。

色んな角を曲がりに曲がって相手を巻く。もう着いてきていないか確認するために後ろを振り返りながら走っていると、強く何かにぶつかってしまい、弾かれるようにお尻から地面に着地してしまった。

「……ッ!!痛っ!」

反動でキャップが頭から外れ地面に落ちた。
中に上手に仕舞っていた自慢のロングヘアが元々の曲線を描いて落ちた。

何にぶつかったのか確かめる為に勢い良く前を見いやるとそこには、やや童顔顏の金髪アジア系美男子君を見つけた。

「あっ!すみませんっ!大丈夫ですか!?……じゃなくて、Siento. Es correcto?(ごめんなさい。大丈夫ですか?)」

どうやらつい母国語で話してしまった彼は慌ててスペイン語で話してくれた。

「ええ。ちょっとお尻が痛いけど大丈夫よ、貴方、中国人かしら?……いや、日本語だったわね、安心して。私も日本語話せるわ。」

そう日本語で伝えるとホッとしたような表情(かお)で私の腕を引き上げ身体を起こしてくれた。

「っ!貴方、腕に切り傷があるじゃないですか!」
「……ん?あぁ、これくらい大丈夫よ。なんともないわ。ありがとう。じゃあ、スペイン観光を楽しんでね。」

うーん。私の好みの子。
いつの間に怪我をしていたのか、刃物でやられた様な傷があった。今までは緊張感からか気づかなかった。

だが、ココに長居は出来ない。
運悪ければ見つかってしまうし、何の関係もないこの子にも危害が及ぶ可能性がある。

私好みの子に別れを告げるのは惜しいけど、正しい判断をしてその場を離れようとした。

「待って下さい!……それ、明らかに刃物で出来た傷ですよね?ばい菌が入ったら大変だ。僕、手当て出来るので是非させて下さい。」
「いいえ。大丈夫よ。直ぐ帰ろうと思ってるし、手当てなら自分でできるもの。」

最後に彼に最高の私を刻み付けたくて満面の笑みで返答をする。
パシッと腕を掴まれた腕を優しく離させようとしたが、彼は真剣な眼差しでこちらを見て腕を離してはくれず、意見を譲ろうとしない。

もうっ!コッチは急いでるんだって!
ホントはね、あんたみたいな美男子こっちからシッポ振ってついて行きたいのよ。
けど、タイミング馬鹿みたいに最悪なんだよ。

「……!」

気を張っといていたからか突然、殺気の混じった様な気配を感じた。
バッと背後を振り返るとさっきの男どもの仲間が数人こちらに向かってきたのに気づいた。

ちっ。もう来た。くそ、今逃げても捕まるだけじゃないか。
この男がしつけぇから!逃げるタイミング失ったのよ。

どうやって捕まらないか考えた時、
目の前に使える"モノ"を見つけた。急いで彼の白のジャケットを半ば無理矢理に脱がして、素早くそれを羽織った。
一瞬訳が分からなさそうな彼の顔を見ながらごめんね。と呟いた。
そして、彼のしていたネクタイを引き寄せなんの躊躇いもなく口付ける。

「んっ、………んっ、ぁ……っ……」

ジャケットは思い通りに脱がされてくれたが、流石にキスには驚いた様子だった。
だが、明らかな拒否をすることもなく受け入れ、更には受身ばかりじゃない、とでも言う様に私の口の中を犯し始めた。

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