Zero | ナノ

焦り

地元の人たちや観光客たちは巨大で神聖的な火炎を見るのに夢中になっており、私の存在はそこらへんにいる人達となんら変わり無かった"ハズ"だった。

だが、あまり人目に付かないような裏路地に入った瞬間、突然後ろからそして前からガラの悪そうな男数人に囲まれてしまった。
今まで付けられているという事実に気づかずにいたなんて我ながら情けなかった。

「お前が神崎菜々だな?」

前方のリーダーらしき男が話出した。

「……私、貴方たちとは初対面なんだけど?」

この姿で猫を被っても意味がない。
顔を見られないようにキャップを深く被り、動揺を悟られないよう冷静に告げた。
すると男達は下品な顔で笑いながらこちらに指を差す。

「お前はそうだろう。だけどな、俺たちの雇い主がお前の事をいい意味でも悪い意味でも大層気に入っちゃったんだな。」

さあ、どちらから始めに聞きたい?
っと言ってくるもんだから、

「じゃあ、悪い意味から知りたい。」

この男が言うであろう事は何となくは分かっていたが、これからどうすべきか考える為に時間稼ぎとして聞いた。

「お前が3ヶ月前に盗んでいった90億円相当の宝石を返さないならお前とその家族も皆殺しにするそうだ。」

私がした仕事だって見つけたのね。

「ふーん。そう。次、イイ意味は?」
「おいおい、少しは動揺しろよ。まったく可愛げねぇな。まぁ、イイ意味の方だが、どうやら俺たちの雇い主はお前の華麗な盗みの技術に惚れ惚れしたらしいんだ。そこで、お前は雇い主の為に働く。そうすればお前やお前の家族には手を出さないそうだ。どうだ?イイ話だろう。」

は?全然良くないし。
それに私は決して他人の為でなく自分の為にしか動かないって決めてんの。
雇われる?馬鹿な事言ってんなって。

「全然。私の家族に手を出したいなら出せばいい。それじゃあそこ、どいてくれる?」

結局選んだ道はこの雇われ集団から姿をくらますこと。
1対7かぁ。

正直辛い。
自信がないわけではないが、無傷でここから逃げ出すのは無理だろう。
頼りになるのは幼い頃に少しだけ習った截拳道(ジークンドー)等の格闘技と腰にある拳銃のみ。
それでも、自分の意思に反して誰かに雇われる事だけは絶対に避けたかったのだ。

すると突如目の前の男が勢いよくこちらに殴るような姿勢でナイフを片手に向かってきたので、私はその男の手を強くはたき、ナイフを落としてから左フックをおみまいした。

それから、後ろから背中を狙ってくる男に は下段回し蹴りを食らわせ一発KOにしてやる。

女がここまで出来るという事実に怯んだ他の敵は一瞬フリーズしたが、今度は集団狩りでもするかのように一斉にやって来た。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -