Rojo | ナノ

Rojo

物語は自分の知らないところで勝手に進んでいく。
その"ある"物語に関する加害者及び当事者はそれを知っているかもしれない。
でも、
被害者は何も事前に知る事は出来ないだろう。
これは、
その異変の前振りであり、
第一歩への道だ。

「新ちゃん!また、菜々の勝ちだね。本当に新ちゃんは弱いなぁ〜。」
「菜々!もう1回勝負だ!次はぜってぇー俺が勝つし!」
「もー。新一ったらもう4回も最下位じゃない。でも、菜々凄いね!全部1位じゃない!」
「だって新ちゃんも、蘭ちゃんも顔に出過ぎ!分かりやす過ぎるよ。」
「オメーが鋭すぎるんだ!」

トランプのババ抜きに熱中する、菜々、新一、蘭。
保育園から一緒だった3人はよく新一の家で遊んでいる。
どんな王道の遊びだって3人居ればなんでも楽しかった。

「しょうがないなぁ。意外と弱い新ちゃんでも勝てる物にしてあげる!」
「くっそー!俺は弱くねぇ!ったくバカにしやがって。いいか?おめーら。次はこてんぱんにぶっ潰してやるから、覚悟しとけ!」

カーペットの上で胡座をかき、膨れっ面でジト目になりながら菜々を見つめる新一。
ただの普通の少女のくせになぜいつも彼女がこんなにも自分の細かな癖を見破るのか不思議でならなかった。

その光景を母親としての目で見守る
有希子と菜々の母親である莉々。

「本当にあの子たちは仲良しね……ずっと…このままでいれたらいいのに。」
「ねぇ莉々?なんかあった?今日はなんかすっごく暗いわ…?」
「有希子。何かあったら菜々を助けてあげてね。勿論、組織には菜々の存在はバレてないわ。だから、だから……お願い。」

普段気丈に振る舞っている彼女の、こんなにも崩れ落ちそうで、泣きそうな顔は滅多にみたことがなかった。だから余計に不安に襲われた。

「あたりまえじゃない!そんな事莉々に頼まれなくたってそうするにきまってるじゃない!」
「ありがとう。有希子。頼りにしてるわよ。」
「でもいきなりどうしたの?……何か仕事でミスでもした?」
「実は最近紫苑さんの行方が分かんなくって、それにちょっと……いや、凄く嫌な予感がするの。」

紫苑さんとは菜々の父親。
何日か帰らない日もたまにあるが、今回は少し長すぎる。
それに組織の一員である彼に危険が無いとは言い切れない。最近は組織のメンバーの数人がノックだとばれ、その全員がバラされたと聞く。丁度今、組織内で空気感がピリピリしており、自分達も捜査対象の一員であることは間違いない。出来るだけ自分の所属している組織に、黒の組織の情報を流す際、細心の注意を払っているとは言え、いつ何が起こるかは分からない。

だからその予感が当たった時、菜々の事が一番心配だった。
もしもの時は菜々を頼むわ。
と悲しそうに微笑んだ莉々に
有希子は暫く胸のざわつきを抑えられなかった。
そしてまた、同じ家に暮らす菜々にとっても母親の異常に気づかない訳がない。
新一や蘭達の細かな動きの変化、癖、顔の仕草から感情を読み取る能力に長けているからこそ、一緒に暮らす両親の小さな感情の変化は敏感に感じ取っていた。

でも、いや………
気づいていたけれど、
考えたくなかった。
ただそれだけ。幼なじみと遊ぶことによってそのざわつきを紛らわせていた。

現実は悲しい事にお母さん達の会話は、微かに聞こえてしまっていた。
PREV / NEXT

- 2 -
TOP MAIN
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -