Rojo | ナノ

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「そんな……ひどいわ透さん!私のことを毎日あんなにも激しく見つめてくださったのに…!」

え、何?か弱い系女子かと思ったけど、思ったよりハムちゃん(勝手に命名)って結構面倒くさいタイプじゃね……
ハムちゃんは、口元に手を置き、悲劇のヒロインの様に嘆き始めた。
それを冷めた目で見る私とバーボン。

「………。(コソッ)あんな事言ってるけど?どーすんの色男。」

バーボンの耳元に呟く。

「はぁ。どーすんのかと言われても。……飲食店でバイトしてた時に、この女がそこの店の常連さんだったんですよ。店員としてメニュー聞く際のアイコンタクトが熱い視線だとか言われても困るでしょう。」
「……ハハッ。」

バーボンも同じく小声で私に呟く。
そりゃご苦労さん。

その目がジト目だったのと、不機嫌そうな声だったのに思わず私も苦笑い。

「そこ!なに見つめ合ってるんですの!?透さんは私の旦那さんになる方ですの。私はあなたが透さんの婚約者なんて認めませんわ!今すぐココで別れて頂きます。」
「へぇー。そうですかぁ……。思い上がるのもここまでくると流石としか言いようがありませんね。」
「な!」

バーボンの裏の顔も知らないくせに、ねぇ。
知ったら絶対後悔モノなのに。

それに、別に見つめ合ってねぇーですわよ。

思わず怒りを笑顔に無理やり変換する。

「……はは。」

隣のバーボンも私のその様子を見て苦笑い。

「あれ?聞こえちゃいました?でも、……お言葉ですけど。あなた、透の話ちゃんと聞いてたかしら?透は私の事を離さないって言ったわよね。私も同じ。私と透は愛し合ってるの。あなたの入る隙間なんて1ミリたりとも無いのよ。」

バーボンの視線が痛いくらい私に刺さる。

別にバーボンを守りたかったわけじゃないから。
何か私の中のプライドのようなものがこの女には負けたくないと思っただけ。

だから………そんな目で私を見ないで。

「そ、それは!貴女が隣にいるからでしょう!?透さんは優しいから!貴女に気を遣っているだけですわ。」
「それなら。……透?本当のことをいっていいのよ。私の事、好き?」

バーボンと目と目を合わせ、長く見つめ合う。
バーボンの太ももに手を置き、頬に手を伸ばす。

「俺は…」

プルルルルーーー、

バーボンが何かを言いかけた時、私のスマホが鳴った。

「あら、あなた。スマホをマナーモードにしてなかったの?仮にも透さんの婚約者としてなってませんわね。」

ムカッ。
悪かったわね。コッチは事情知らずに連れてこられたんだよ。
マナーモードとか忘れとったわ。

「 …失礼。」

バーボンの頬に当てていた手をバックの中に突っ込む。

スマホを取り出して画面を見た。

電話番号のみだけが書かれてある。
互いの身を守る為に名前の登録はしてない。
だが、その番号を覚えている私はスグに誰なのか分かった。
………秀一だ。

あぁ。くそ。タイミング!……タイミングがぁ!

「…あら?出ないんですの?別に良いんですよ、出て貰っても。まぁ……今ここで出れるような相手ならですけど。」

私のなかなかでない素振りに女の勘を働かせた彼女。
……そうだよ。合ってるよ。本命からだよ!

「ふふ。そんなこと。ではお言葉に甘えて。」

ハムちゃんの目が割とマジだったので、出ない訳にもいかず、
立ち上がり、廊下に出ようとする。

「待ってくださいな。"ココ"で出て貰えますか?」
「は?」
「その電話の相手、男性なんじゃありませんか?じゃないとそんなに電話に出るのに渋りませんわよね?」
「そんなこと……」
「さぁ、早く。電話が切れてしまいます。貴女と透さんの仲を証明出来るチャンスかも知れませんよ。」

確かに…バーボンとの関係を信頼させるのには持ってこいのタイミングだろうな。
だが、こっちは秀一にこの状況を知らせてない今、余計な誤解を招くだけで、私には何のメリットもないんだよ!

バーボン……ほんと恨むわ。

画面をタップする。

『菜々、出るのが遅かったな。今大丈夫だったか?』
「え、ええ。もちろん大丈夫よ。それより、何かしら?」

ハムちゃんの顔をチラッと見ると、真剣な眼差しで此方を見ていた。

うわー。面倒くさ。なんで電話だけでこんなに神経使わなきゃならないのよ。
しかも休日に!

『………いや。悪かったな今かけたりして。対した用事じゃないから直接言うことにするよ。じゃあまたな。』
「あ、じゃあまた。」

秀一は何かを悟ってくれたのか、電話を終わらせてくれようとしてくれた。
だが、それを察したハムちゃんが勢いよく私のスマホを奪い、私の代わりに秀一の電話に出た。

「はじめまして。失礼ですけど、貴女、この方のなんなんですの?」

いーやぁー!やーめーてぇ!
余計な事を言うな!言うでない!

『………君は、誰かな?』

わざわざスピーカーモードにしてくるハムスター娘。

「私の事はお気になさらず。少しだけ話に付き合ってもらいますわ。」
『……。』

秀一、お願い。お願いだからその電話切って………

私の方に向かい合い、電話を私の方に向けた。

「やはり、殿方に聞くのは失礼ですわね。貴女はこの男性とは何もないんですよね?なら、この場ではっきりと透さんとの関係、言って下さいますよね?」

ハムちゃんなんて可愛い言い方じゃあ我慢ならない。

ハムスター娘の笑みが本当に腹立たしい。
バーボン。借りは全て、1μm分も残り残らず、返すから。

私はありったけの笑みでハムスター娘に微笑みかける。

「なら、遠慮なく。もう一度言いますけど、私は透と恋人関係です。これで満足かしら?」

確実に電話の向こうの秀一には聴こえる声。
はぁ。…………短かったな。私の人生。

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