Rojo | ナノ

Rojo

ー日曜日ー

ピンポンピンポンピンポンピンポン…………!

「うるさぁぁーい!誰!?」

無視しようと思って布団に潜り込んでも、うるさく耳に響く呼び鈴に腹が立ちベッドから勢いよく飛び起きた。
そしてそのまま真っ直ぐ玄関に向かい、厳重に閉じられたドアの鍵を思いっきり開ける。
吊るしている鈴の音がいつもと違って雑な音になってしまった。

「誰って、今日迎えに行くって言いましたよね?おはようございます。安室透です。」

ニコッと微笑まれたそのパーフェクトな笑顔に余計に腹が立ち、思わず口と目が引きってしまった。

「あなたねぇ、確かに今日約束はしたわ。けどね、時間も知らされてなかったし、どうせ早くて11時頃なのかな?っておもうでしょ、ふ・つ・う!なによ!まだ7時よ!夜じゃないわよ!朝の7時!」
「そんな怖い顔して怒らないでください。目つき悪くなってます。」
「一体誰のせいだと…!はぁ。分かったわよ。どうせ今起きたばっかで準備まだだし、せめて20分後に出直してきて。貴方の家隣でしょ。家帰るの大した苦労じゃないわ。」

てことで。とさよならを示す為片手で手をひらひらと振り、大アクビをしながらドアを閉めようとした。しかし何かにつっかえてドアが閉まらない。

「…は?」

下の方をよく見るとバーボンの足がドアを閉めるのを堰き止めておりドアが閉まらない。

「ちょっ、なによ。ドア閉まらないでしょ。足どけてよ。」

何度もガシャガシャとドアを閉める行為をしてるのに足を全く退けようとしない。

「そうですねぇ、思ったんですけど女性の支度って割と20分じゃきついでしょう?僕が手伝ってあげます。」
「なっ、余計なお世話よ!手伝うって何を手伝うつもりなのよ。それにすみませんねぇ!20分で終わらせる自信しかないんですよー。貴方のためにオシャレする気なんて無いんですからね!分かったらそこの足、どけて下さる?」

ガコン、ガコンと更にドアを2、3回閉じようとする行為を試みるが、全然退いてくれる気配がない。

「それは残念です。まぁ。別に貴女がオシャレしようが、しまいが僕にはどうでもいいことですけど、年頃の女性ですし、オシャレするの大切だと思いますよ?」

その言葉と共にドアを閉めようとしていたチカラの何倍ものチカラが逆の方向に引かれ、
身体がその衝撃で、体が前へ持っていかれた。

「…うわっ、」
「っと、アブナイですねぇ。気をつけて下さい?」
「誰のせいだと!」

前方に倒れそうだった身体をバーボンが腕一本で支えてくれた。

「でも、……助けてあげたお礼として、お茶くらい頂きたいんですけど。」
「だから、誰のせいだと…!って、もう上がってるじゃない。はぁ。」
「普通の女性なら僕が何も言わなくても喜んで家に上げてくれるんですけどねぇ。」
「ふつーじゃなくて悪かったわね!ふつーじゃなくて!」

あー。なんか朝からどっと疲れた。
もーいい。好きにしてくれ。

バーボンはホントにお茶を取りに行ったのか台所に向い、私は歯ブラシや顔を洗うために洗面所へ向かった。

「こんな朝早くから一体私を何処に連れて行こうってんだ。あの男は。」

歯ブラシに歯磨き粉をつけ、口の中でカシャカシャ言わせる。
行きたいトコって言ってたし、組織の任務ではないはずなんだけどな。
まぁ。夜には秀一と会いたいし、夜じゃないだけマシといえばマシだけど、
一度気になり出すと、綺麗な答えを導くまで何かのつっかかりを取ろうと余計考えてしまう。

「……そーいや、バーボン何気にモテりゅな、」

暇な歯磨きタイムに思考を巡らす。
あの男は人ズラがいいしー。あ、てことはデートとか?好きな女性とのデートに着ていく服を私に見立てて欲しいのでは?
センスの良いベルモットじゃなくて、私を選んだ理由はベルモットだと噂になるから、私だと秘密を保有してて都合がいいのね、きっと。
だーから早起きしたのね。色んな店に回って服探すために!
………ふふ。私の妄想通りならちょっとカワイイのに。

歯磨きと顔を洗うのを終え、部屋に戻ってハンガーに吊るしていた服の中から、今お気に入りの服を選び、朝食の準備の為にリビングに戻る。

「あれ、意外と早いですね菜々さん。もっと時間かかると思ったのに。」

バーボンが私の家のキッチンから何かを運んでいる。

「それ、……バーボンが?」
「ええ。僕がきた時に起きられたのでしょう?なら、朝食もまだかと思いまして。」

コトっとテーブルの上にご飯と野菜スープ、オムレツにサラダを順番に置いていく。
………ちょっと感動。私のためにご飯作ってくれるなんて。
しかもこんな短時間で作るなんて手際の良さ、ちゃんと料理上手なんじゃない。

「てかバーボンご飯作れるんだ。」
「ええ、人並みには。それよりも勝手に材料や道具を使用して怒ってらっしゃるかと思いましたが、どうやら要らぬ心配だったようですね。」
「ん、なんで?怒んないよ。寧ろありがと。誰かの手料理なんて久しぶりで、ちょっと感動しちゃったくらい。ホントありがとね。」
「…………」

反応を示さないバーボンを見ると、息もつけない、びっくりとした顔つきをしていた。

「…………何よ。人が折角お礼言ってんのに。そんなに珍らしそうにして」
「……いえ。それに手伝うと言ったでしょう。礼は無用です。貴女が素直にお礼を言うなんて、今日は遠出はしない方がよさそうですね。」
「何をー!ああ言えばこう言うんだから。素直に受け取りなさいよ。」

自分が作ったものでない温かく優しいご飯が口に触れたとき、ほっこりと温かい何かが私を包み込んだ。

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