Rojo | ナノ

Rojo

そうか!………そうだ!APTX4869だ!
全ての鍵はこの薬が握っている。

ならば私がすることは1つ。

APTX4869の完成を遅らせること、もしくは極秘に完成、データ破壊だけだ。

組織の研究者の中でもシェリーと私だけがAPTX4869の能力を知っている。
実験中にマウスが1匹幼児化したのを共に見て、薬の恐怖を感じ、そのマウスを殺したのも私たちだ。
勿論記録にも残していない。だから、他の研究者達が知り得ない事実。
しかし、今後薬の研究で彼らの前でまたマウスが幼児化したら元も子もなくなってしまう。

「志保……」

死のうと思って薬を飲んだのか、もしくは幼児化して逃げようと思って飲んだのかは、分からないけど、ジンが言うには死体はなかった。
今はその事実だけで十分だ。

「志保が組織を抜けられたならそれでいい。」

もうこちらには関わって欲しくない。
ジンに見つかれば彼女は確実に殺されてしまう。あの男に情けなんてないし、ましてや元々組織の習わしは"疑わしきは罰せよ"なのだから。

それに志保ならたとえ子供の姿であっても大丈夫だ、あの子は頭が良い。
少し心がやさぐれてて、誰かに頼る事をしようとしないけど、
でも新しい人生をやり直せる。ただ私は志保がジンたちから見つけられなくすればいいのだから。

「その為にはまず居場所を特定しなくちゃ、まともに戦えないわね…」

車から流れる景色を適当に眺めながら昨日ジンが去った後の気持ちを静かに思い出していた。

ーーーーーーー
ーーー

「…………菜々さん。」
「ん、……何?バーボン。」

白のRX-7の助手席から運転席で運転という立派なお仕事をなさっている金髪俺様男へと視線を向けた。
危ない。危ない。
こんな付け入る隙間もない男の前でぼぉっとしてみろ。
またねちっこいイヤミな説教しか待ってない。

「……不本意ながら、少しお願いがあるんですが。」

いつもとは違うシュンと子犬のような目で私におねだりをしてきた。
こんな演技なんてしちゃって。きっとろくな話じゃないわね。
首を突っ込んでお願いを聞いてあげたら損しそう。

「あら、ごめんなさい。私、忙しいくて。だからお願いはベルモットに頼んで貰えるかしら?」
「へぇー、それが恩人に対する態度ですか。」

先程の少しシュンとした顔持ちはやはり演技だったらしく、急にふてぶてしい態度で私に突っかかってきた。

「なによ。文句ある?」
「赤井との関係を取り持ったのって誰でしたっけ?あれ?それに、赤井はFBI、でしたっけ?」
「……ムカつく言い方ね。」
「忘れたとはいわせませんよ?赤井の情報を分けて差し上げたのは誰だと思ってるんです?僕ですからね。……ああ。あの三十路FBI野朗の名前を出すだけで反吐が出る思いです。」

片手で困ったさんのポーズをとり、首を横に振ってため息を漏らし、私の方をチラッと見てきた。

「……恩義背がましいわね。だいぶ前の話を突然蒸し返すなんて。で?その鶴の恩返しには何をお望み?」

車窓の縁に肘をついて頭を支え、バーボンの言葉の意味を図ろうとジト目で彼を見つめる。
いつも志保が何かを企む私にしてた様に。

するとバーボンは運転中のクセに顔を私の方にしっかり向け、いつも"女性"に対してしている爽やかな笑顔で、首を少し傾げながら私に質問を問いかけてきた。

「今週の日曜日空いてますか?」

コイツを見るだけでよく分かる。
自分が一番カッコ良く見えるやり方でおねだりしてきた。

「んーっと、確か秀一んちに行くつもりだったけど?」

だからコチラも笑顔でなんて事ない風に答えてみる。
ふふ。厄介事はごめんよ?今忙しいの。

「ああ!そうなんですか。暇なんですね!では、日曜日に菜々さんのお家にお迎えにあがるので、ちゃんとお洒落してきてください。」

はぁ?この男、全然聞く気ないじゃん。

「暇じゃないんですけどー。」
「菜々さん。度々申して申し訳ないんですけど、どうも状況を理解していらっしゃらないようなのでもう一度言いますね?あの男と縁を切らずに円満になれたのって誰のおかげでしたっけ?」

少し声に重みを感じ、バーボンの笑顔に影が射した。
絶対服従を思わせるような空気感があった。

「…ちょ、狡い。」
「そうなんです!僕の"おかげ"ですよね、物分かりが良くてイイコですね。」

そう言ってバーボンは運転中にもかかわらず私の頭をガシガシと撫でた。

「おわぁッ、バカ!前!前みて安全運転して!」
「ふっ。これくらいで事故を起こす僕ではありませんよ。」

他人をからかって優越感を味わってる時の様なイタズラな笑みを浮かべて静かに頭から手を離してくれた。

いや、違う。本気で彼が事故を起こしそうだから、って理由だけで拒絶の反応を示したわけでは無かった。
秀一、新一以外の男性からの過度なスキンシップに慣れていなかったのが、大きな要因かもしれない。
自分でもびっくりするくらい赤くなった顔を隠したかった。


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