Rojo | ナノ

Rojo

私は羊さんについていき、共に彼の部屋に入ったあと、彼の飲んでいたお酒の中に組織が開発した1粒の小さな毒薬を飲ませて殺し、後から追いついてきたバーボンが、彼の所持していたパソコンから情報を盗む出し、一旦USBに保管した。

「ねぇ、バーボン……気づいているよね?」
「菜々さんも気付いてましたか…」

実は私たちが部屋を物色している間ドアの後ろに恐らく2人程度、人が……いや、敵が、待ち伏せていた。

人間は酸素を求める。それゆえにドアの下にはほんの少し隙間がある。この部屋は、カーテンで光が遮光されているためとても暗いが、
反対に廊下は電気をずっとつけっぱなしにしているのでとても明るい。

そこで、何も問題がなければこの明かりはほんの少しだがこのわずかな隙間から見える。
それはこの部屋に来て間もない頃に検証済み。

でも、

今はその明かりが消えていた。

となると誰かがドアの後ろに待ち伏せているということ。
廊下はそんなに広くない。それにそんなに多い人が廊下にいれば人目に付きやすい。
彼らだってリスクは犯したくないだろう。

だから2人程度ってワケ。

「どうしよっか。」

私はドレスと高めのヒールだし武器はガーターベルトに着けてるナイフだけ。
一言でいえば要するに役立たず。むしろ足を引っ張る邪魔者でしかない。

「僕が思いっきりドアを開けるので、菜々さんは右手側の階段まで走って下さい。いいですか?行きます!!」

私が、その問いに頷いたのを確認すると安室さんはドアを思いっきり開けた。

ドンッ!!

足手まといにならないように私は右手の階段の方へ向かって走り出した。
ああ!早く走らなくっちゃ。気持ちがつい逸る。

―――それでも私は足手まといになる運命らしい。

階段入り口から体格のいい男が現れた。3人目がいたとは…

それもデカいナイフを持って。

これは……かなり……イヤ、めちゃめちゃやばい。

「おっと…良い女じゃねぇか。だが、悪いが死んでもらうぜ。」

そういった矢先。ナイフを横切りしてきた。何とか自前の反射神経で避けれたけど、

次は無さそうだ。

「ヴェスパー!……っく、今行きます!」

安室さんは2人の男の相手をしながら私にそういう。

体術にそんなに長けていない私だが、なんとか時間稼ぎでもしようと、またしても横切りしようとした男をかいくぐって男の反対側に移動した。

「その高いヒールとドレスの癖に上手く避けやがるな。余計気に入ったぜ。お前。俺の女になるなら命は助けてやってもいいぜ?」

誰がお前みたいなハイエナ男と付き合うもんですか!

「ふっ。死んでもお断りよ。」
「なら、死ぬしかねぇぜ?今度ばかりは後が無さそうだがな。」
「それは、どうかしらね?」

私は、スカートを少しめくり、相手の目を逸らさずにガーターベルトからナイフを取り出した。

「へぇ。用意周到ってか?なら、我慢大会の開始だ。」

シュッー!シュッー!とナイフが空気を切る音が生々しくフロアに伝わる。
相手のナイフを私のナイフで受けて流す。そして、相手に隙が出来れば私がつくがそれも流される。キリがなく、ただ体力だけが奪われる。

目を逸らしてはダメ。一瞬でも逸らしたらやられる。
頬に一個。左の二の腕に一個。避けきれなかった傷から血が流れる。

「ハッ。なかなか腕はいい方だが、もう息が絶え絶えじゃねぇか。」
「うるさいなぁ。もう終わらせてあげるわよ!」

USBを持っているのは私。
負ける訳にいかない。

相手が再び横切りをしようとしたのを狙って反対側に私も横切りをし、その当てた反動で相手のナイフを落とす。その隙に顎に一発食らわせて気絶をさせた。

「…はぁ、はぁ…長かったぁー。」

途切れた集中とあまりにデカイ体力の消耗のために肩で大きく息をしていると、安室さんも相手2人をノックダウンにさせたようで、こちらに寄ってきた。

「ああ菜々さん!良かった!本当に無事で良かった!」

肩を抱き寄せられる。
悪い気はしない。だってお互い命懸けで大変だったのに生き残れたんだもん。今はこの"生"を味わいたかった。

「では、そろそろ行きましょう。この男も目覚めるかもしれないですし、この方々が防犯カメラを壊しといてくれたお陰で僕達はカメラに写って無いですけど、警備員が不審がって来られても困るので。」

そう言われ、また走りるのかと思った。いや、無理、正直限界だよ…
それでも、頑張るしかないと脚を叱咤していると、

ヒョイ

そんな効果音が正しかった。

「えっ?…ってうわっ、ちょっやめて!」
「やめていいんですか?菜々さんもう息も絶え絶えですし、脚、疲労でちょっと震えてましたよ?流石に僕も今から走れなんて言えませんからね。」

リアルお姫様だっこ。

「でも、これ恥ずかしい…」
「我慢ですね。菜々さんドレスなのでおんぶは出来ないんですから。」

その言葉を理解した私は、仕方なく安室さんの首に優しく腕を巻いた。安室さんだって疲れてる筈なのに。

「あーでも、これ、ちょっとヤバいな、」

安室さんの首の近くにいるため、小さく呟いた言葉も自然と聞き取れてしまった。

「ヤバいって何が?……あ、ごめん体重!…」
「いや、そうじゃなくてですね…」

なんて言ってるうちにホテルの裏口まで来た。エレベーターを使えばいいのに、今会場に戻るのは危険だとか安室さんが言ったから階段を使って来たのだ。………私を抱えたままお疲れ様です。

「菜々さん…誰か降りてきますね…」
「ん?……!!」
「絶対に声を出さないで下さいよ、」
「え?外に出ないの?」
「今出ても捕まるだけなので、」

そういいながら安室さんは掃除道具入れのロッカーをチラリと横目にした。

「…っん、これ窮屈だね、」
「…耳元で喋べんないでください。………!来ました。黙ってて下さい。」

私は安室さんに抱きかかえられたままだったので、丁度目線がロッカーのちょっとした隙間のところだったため、中から外を覗くことにした。

「っち!逃げられたわね。こちらが保護する予定だった組織の一員も部屋の中で殺されていたし、彼を狙った3人組の男共も倒れていたから、階段で逃げたと思ったのに…!」

ええ。正解です。そう心の中で呟く。でも、この女性の声、どこかで…。

「もう!折角の手がかりがまた組織によって潰されちゃったわね、行きましょう、シュウ。ここには何も無いわ。」
「…あぁ。」

ッ!!
あぁ。とその答えた返事。
そして、微かに見えたその姿…

漆黒の美しい線を描くその髪、低めのその声…そして、その顔。私の、私の愛する人の物だった。
秀って………?
ライ、じゃなくて?

ライも組織の一員じゃなくて…?

今思えば、あの喋っていた女性は、〈倭〉のカフェで出くわしたあの女性の物だった。

「…ねぇ、バーボン、ライって………」
「くっ。………教えてあげます。ライの事を、いや、赤井秀一の事をね。」
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