Rojo | ナノ

Rojo

「いきなり連れ出して悪かったな。」

ホントに悪いと思ってんのかねぇ。
おかげで当分あの店には行けないんだけど。お気に入りだったのに。

流れていく景色を眺めながらライの言葉に心の中でツッコミを入れる

「別に。どうせ組織関係の話なんでしょ。貴方、私の連絡先知らないから直接会うしかないし、あそこで言う訳にもいかないんでしょ。で?ジンかラムから任務の伝言?それとも貴方のヘルプ?」

どうせ誰かを殺すなら狙撃がいいなぁ。だって夏だし、湿気の高い日本だから血の匂って結構濃く噎せ返って最悪なんだよね。

「いや、…組織とはなんら関係ない。ただ、お前があの店員に気に入られているのが気に食わなかったから連れ出した。」

ん、?
ライの意図が良く分んなくてバッと隣を見る。

「ッぅえっ!?、今なんつって、」
「あの店員がお前に気があるのは直ぐに分かったからな。それに何故連絡よこさない?番号とアドレスあげただろ?」

運転をしているライは何時も通りの彼にみえる。
でも。見た目は完璧なポーカーフェイスなんだけど、心なしかライの言葉にトゲがあるの感じた。

それに気になることが一つ。

「でもあの外人女性。ライがジョディって呼んでた人ってもしかしなくても彼女だよね?」

ずっと聞きたかった事。
でも、その声が異常に冷めきったモノであることに自分でさえびっくりした。

「なんだ。ヤキモチか?」

なのにライは先ほどとは打って変わって楽しそうな声で逆に質問を返してくる。

「な!違います。どうやったらそうな羨ましい考え方になるんですか。自意識過剰もいいとこよ。」
「ほぉー。にしては声が悲しそうに聞こえたのは俺の勘違いか?」
「……彼女さんをほって置いて私だけを連れ出すなんて彼女さんに悪いと思っただけよ。」
「ふっ。あいつは彼女じゃない。だからそんな事は気にするな。」

運転中のライから頭をポンポンと撫でられた。
だけど、
信じれないと言うようにジト目をライに向ける。

「安心してくれ。どうやら俺は"初めて"会った日から君に恋に落ちてしまったようだ。」

なっ。はぁ!?

「貴方が私のこと好きかなんて証拠ないし。信用出来ないの。私がヴェスパーだから利用しようとしてんじゃないの?言っとくけど、貴方が幹部だからって愛人にはならないから。」

こうは言ったけど、あれ?愛人になった方がライから組織の情報取れたんじゃね?って思ったが、後の祭り。

「…証拠を示せばいいんだよな、」
「へ、」

なにいって、っと言葉を続けるとライは私の頬に手を添えた。

「…っん!?…はぁ、やぁんっ」

運転中のライが突然私にキスをしてきた。
事故るっ!っと思ったが、車自体はもうすでに止まっていて、ちらっと左上を見ると赤信号が目に入った。

「ちょっ…ん、ラぁィ…やめっ、うぅんっ、」

びっくりしてライの肩や胸元を押すがビクともしない。
ライは空いている手で私の胸に服の上から触れ、頬に置かれていた手は支えるべく頭に添えられる。

「ッン…うっん、…はぁ、………くるしっ……」

深い深いキスを名残惜しそうにやめ、最後に少し大きめな音のリップ音を出してライの唇が離れた。

「俺は惚れた女にしかキスはしない。」

ライの目が真っ直ぐ私の目をみてる。透き通るような、宝石のような綺麗な緑色の瞳が私を捉えた。

ーーーーーパッパー・・・

後ろの車のクラクション音が耳に突如舞い込む。
ライはその音を聞くと同時に車を発車し、

「もう赤か。ふっ。なんだ?物足りなさそうだな。」

ニヤッと先程のキスの苦しさを全く感じて無いかのように私に向かって話し掛ける。
キスされた事の羞恥と身体の下腹部が疼き始めた事がなんとなくこっぱ恥ずくライをキリッと睨んだ。

「くくっ…そんな顔をされてもな。なら続きは、後にでもな。」
「………ばぁ〜か。」

今の私にはたったそれだけの皮肉しか思いつかなかった。


ーーーーー

「……これ、おいしい」

菜々が口に入れた飯に対して感想を言っている。

俺はあの後菜々をフレンチレストランへ連れてきた。
俺はワインを嗜みながら食事を楽しむ。最近は専らバーボンしか飲んでいないので、たまにはワインもいいもんだ。

「なんだ?」

菜々が此方を睨んでいる気がする。

「ワイン。ズルい。私も欲しい、」
「……ダメだ。」
「なんで?ライに拒否権ないし。それに……それって飲酒運転なるんじゃないの?」

ニヤッと菜々が目で"断れるわけないわよねぇ?"と訴えかけている気がする。

正直、毎日バーボンを飲む俺にとってワイン程度ジュースと同じなんだが。
だが、今俺が菜々が未成年だと知っていると知られる訳にはいかない。

「菜々は、この階の上のショッピングセンターで買い物をするだろうと思っていたからな。3、4時間はこの建物内にいるだろ?」
「ふぅーん。じゃあ"今"はいい。」

ーーーー

「あ、すみませーん。シェリー酒頂けますか?」
「おい。もうそろそろやめておけ、」

食事が終わり、ショッピングを楽しんだ菜々によって案内……というより、行かされた場所は、バーだった。
本当は未成年なのだから余り飲ませたくない。

「良くココくるのか?」
「まぁね。」
「お前、何歳なんだ?」

本当は知っているが、年齢確認はどうするのかが気になって疑問を別の形でぶつけてみた。
すると、見せられた証明書には…

「…21歳、女。神崎菜々……。」

偽造書だし。しかも流石とで言うべきか彼女の顔立ちからして年齢21歳って違和感なさ過ぎてなんともいえない。

コトリ・・・・
「シェリー酒でごさいます。」

透き通ったハチミツ色のワインが菜々の目の前に置かれた。
そして緩やかな動作で菜々は水を含んでるような朱色の艶やかな唇を開き口にシェリー酒を一口、二口含んだ。
ワイングラスをコトッとテーブルに置くと一拍、二拍してから菜々はこちらに顔を向けた。

「…あとは、貴方にあげる。」

そう言いながら俺の方にシェリー酒をスライドさせた。
酒のせいで潤んだ瞳は俺を疼かせる情欲的なもんがあった。

「…!!」

そうか。酒言葉、か。
菜々が"わざわざ"シェリー酒を飲んだ理由を理解し、乗った。
なら俺が言うべき言葉はただ1つ

「…おごってやる。」
その言葉を聞いた菜々はふっと柔らかな笑みを浮かべた。

「やっぱ知ってるわよね。……そうだと思った。」

女性が頼んだシェリー酒の酒言葉は「今夜は貴方に全てを捧げます」という意味が込められている。
それに対して男性が「おごる」と言うと「今夜は離さないぞ」という意味になるのだ。

まさか菜々が酒言葉なんぞを知っているとは思わなくて反応が遅れてしまったが、
俺は流れる動作で菜々にキスをし、テーブルに料金を置くと共に菜々を立ち上がらせた。

「昼間の続きを……しような。」

甘い声は夜の街へと掻き消された。
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