「ああ、それとな菜々君。君には日本で活動してもらいたいんだ。」
「……日本、ですか?それは構いませんが、」
「実は今、組織の幹部たちの力は日本に集中しているらしい。日本生まれの君ならやり易いだろうと思ったんだが、どうかな?」
させていただきたいのはやまやまだけどさ、
「……大学をまだ卒業してないので流石に、してからがいいんですけど、」
甘い考えかな?と思い、恐る恐る顔を伺うと、
「ああ!そのことか。それなら心配しなくていい。私にコネがある。」
凄く爽やかな笑顔でそう返されたが、それって、教授しかいないよねー!
結局、副長官のコネとやらで私はあと一ヶ月で日本に向かう事となった。
失礼しました。と言い、副長官室を出る。来た道を暫く歩いていると、カフェテリアらしき場所があったので、昼ごはんを食べようとそこに立ち寄る事にした。
「……あら。菜々ちゃん、よね?」
耳慣れた声が聞こえたので振り返ると、そこには水無さんがいた。
「水無さん!さっきぶりです。」
「ははっ。怜奈でいいわ!それより、さっき思ったんだけど……副長官に直々に呼ばれたって事は菜々ちゃん潜入捜査員になっちゃった?」
軽々しく人には言えないことだが、彼女の真剣な目に正直に話すことにした。
「……はい。でも嫌じゃないんです。寧ろ自分から望んだ事なので嬉しいんですけど、」
続きの言葉を言い出せずにいると
怜奈さんがその先を汲んでくれた。
「……"怖い"?自分は選ばれた人間でも無いのにココまで這い上がって来てしまったって。本当は誰かの期待に応えられるのか分かったもんじゃないし、足手まといでしかないんじゃないか。とか考えちゃうわよね。私も潜入捜査官なのよ。だから、その気持ちはよく分かるの。」
怜奈さんも、捜査官、なんだ。
「実際なってみると、つい考えてしまうんです。…なにかアドバイスとか頂けませんか?」
怜奈さんがどうしているのか知りたかった。
「……そうね私は、自分の中で決めてる事があるの。…一般人とは恋をしないってね。だから恋人を作る時は私の様な人間だけにするの。理解があるし、もしもの時にも対処しやすいだろうし。
……もし菜々ちゃんに恋人がいて、その彼が一般人なら別れた方が双方にとって賢明だと思うわ。」
「…別れ、ですか。」
言われた事が正しいのは重々承知だが、誰よりも心を許す存在を、恋人を手放すのは、デカイ代償だと感じた。
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