Rojo | ナノ

Rojo

とうとう今日という日がやってきた。中1の時から夢見た現実。
本当に人生何があるか分からない。

「……わぁ、お客様…。お美しいです。お客様の様な方のお手伝い出来るなんて私、幸せです!」
「いや、大袈裟ですからね……。」

いや、そんなに言って貰えるほど大した人間じゃないですよ…。

「きゃぁああ!菜々ちゃん!似合いすぎっ!まるで天使よ!地上に舞い降りた天使!っあ!写真撮らなきゃっ」

大慌てでカメラを準備する有希ちゃん。……だから大袈裟だって。

「あ、有希ちゃん、撮ったらその写真2枚くれない?」
「勿論よっ!このメモリは永久保存するんだから!……って2枚?1枚は新ちゃんにでもあげるの?」

ニマニマと下品な笑みを浮かべ始めた有希ちゃん。

やめなさいその顔は。

「……違いますー。1枚はお世話になってる大学教授に頼まれたのであげるだけです。」
「えっ?新ちゃんにあげないのー!?」
「だってあげたらなんでこんな姿してるか問い詰められるじゃないですか。」

「えー。じゃあもう1枚はどうするの?」
「え?自分用ですよ。こんなドレス着れる機会なんて滅多にないし、」
「えー!!新ちゃんに見せたい!」
「……今回はダメです。それにもうドレス姿はこの間見せました。」
「お化粧とか髪のセットとか!お肌の手入れとか最高の状態なのにぃ」

明らかにションボリした有希ちゃん。だって見せたらなんて言われるかたまったもんじゃない。
絶対問い詰められちゃうもん。
今回は仕方ない諦めてもらうしかない。

「あ!お客様。"Phantasm"行きの車が到着致しました!」

ここのお店の従業員の方が私を呼びに来た。もう行かなきゃ。

「有希ちゃん…。もう私行かなきゃ…」
「菜々ちゃん。今までお疲れ様。よくここまで頑張って来たわね。さすが、さすが莉々の娘よ。でもね、私だって貴方の事は本当の娘だと思ってるのよ。貴方は決してひとりぼっちなんかじゃない。今回だってきっと大丈夫。それにね、他にもいっぱい貴方を心配する人はいるの。それを忘れないで。面接も、ただの食事会だと思ってリラックスしなさい。変に力んだら答えられる質問だって答えられなくなるわ。……幸運を祈ってるわね。」

ハグをしてくれた。
有希ちゃんの言葉に喉が熱くなり、胸が詰まった。

折角ゴージャスにしてもらったんだから涙で台無しにするわけにはいかない。
グッと我慢して耐えた。

そして爽やかな笑顔を浮かべて

「私にとっても有希ちゃんは特別な存在だよ。私も第二の母だと思ってる。本当に今までありがとう。とりあえず、もう行くね。」

「ええ。いってらっしゃい」
「いってきます。」

私は車に向かって足を進めた。

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